「イギリス映画を代表する名作、オーセンティックな映画技法と人情劇の温かさ」リトル・ダンサー グスタフさんの映画レビュー(感想・評価)
イギリス映画を代表する名作、オーセンティックな映画技法と人情劇の温かさ
舞台出身とは言え初の映画監督作とは思えぬスティーブン・ダルドリーの映画技法と遊び心ある演出が、完成されたリー・ホールの名脚本と見事に調和したイギリス映画。父と子の葛藤と情愛をクライマックスまで盛り上げるテクニックが素晴らしい。亡き母のピアノを焚いて暖を取る寂しいクリスマスを挿んでからの、父の心境の激変をビリーの意を決したダンスで表現した流れは、人の心の本当のありどころを描く。イギリス映画のシニカルさもユーモアも過不足なくあり、それでいて温もりのある場面の表現も見事。バレエ学校の合格通知のシーンは、同作ミュージカル化で苦心したようで、ここに映画表現の特長が生かされている。試験場面では音楽が鳴り始めても、ビリーの心と体が一つになり自然と踊りだすまでの間を試験官たちの訝しげな表情で捉えた演出も映画的。ビリーのリズムを取る足のカットと覗き込む試験官が面白い。
才能の目覚めの頃の子を持つ親の心情に寄り添う大人な作品、幅広い世代にプレゼントされた映画の良心作。
続けての解説拝領、
なーるーほーどー!です。
本作は映画制作のお手本ですね。
ストとバレエの交互のカットや、急坂の社員住宅の眺めも画面にリズムを加えましたし、走り回るビリーといつも道ばたに動かずに立っている少女のコントラストも同様に、観ている側に物語の次の展開を予感させていました。即ちこの炭鉱町に留まり続けるしかない「石炭にしか興味のない」父達と、外界に飛び出す用意周到のビリーと。
熱いご返信を頂戴し、感激至極です。
ええ、おっしゃるとおりですね、淀川長治さんならば必ずや、涙ぐみながら本作品の良さ、奥深さを語っておられたでしょう。
・太ってしまったバレエ教師の姿やら、
・彼女のセックスレスの暴露。&早熟なその娘の爆弾発言(笑)など、
そして合格発表の日のあの一家の落ちつか無さなども、
「労働争議の苦しさを何とか笑いながらコミカルに乗り越えて行こうとする監督の心」にも、今回改めて気づきました。
「フル・モンティ」で感じたものと同じです。
Gustavさんの遠征。小生の遠征。良い秋の一日になりましたね。
ありがとうございました。
きりん
Gustavさん
いま、映画館から戻ったところです。
他のレビューアーさんへのご説明
〉ピアノを火葬
することが男やもめには必要だった。
共感です。
暖炉の前で瞬間泣く父親を一瞬だけ、監督はほんの一瞬だけ映像に映しました。あの不器用な父親に恥をかかせず、痛みに寄り添い、でもすぐに目をそらしてやる温かなカメラワークに、震えるほど感動しました。
また観たいと思える名作です。
失礼なんてとんでもないです。僕の方こそ傍若無人な押し付けたコメントを入れてしまい、申し訳ございません。おっしゃるとおりだと思います。ただ、僕の場合!初見でピアノを焚く場面を見落としていたのが悔しかったのだと思います。しかし、おっしゃるとおりの見方になるのだと思います。ホーリナイトに形見のようなピアノを焚く行為、そして、その後の父親の態度の急変。そうですね。無骨で頑固なイギリス人らしい表現なのだと思います。納得しました。自分でイギリスらしい名作と言っておきながら、そこを理解できないのはまだまだですね。
最近、ちょっと、僕のレビューが暴走しているかなぁって感じています。理由はあるのですが、少し自粛するつもりです。ありがとうございました。本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
僕もビリー・エリオットをそう考えています。イギリス的名作だと思っています。しかし、母親のピアノを焚く場面を僕は見落としていました。それが、僕としては怒りを通り越して、ショックでした。鍵盤の上にはコードが書かれ、母親が息子の為に残した大事なピアノであることは疑いないことです。ファシズムの本を燃やす行為と同じように僕の目には映りました。大変に残念です。
Gustavさん
私の拙いレビュー・コメントへ、勿体ないようなコメントの返事を有難うございます。(最早コメントではないですね👀)
舞台演出の技巧が巧みに随所に散りばめられていたんですね。思い起こすと、深く頷けるシーンばかりです🤔
BBC制作のドラマ(NHKで放映)のレベルがハイレベルなのも、イギリスにそのような歴史が有るからなんですね。
深いコメントを有難うございます。良い作品が未だ未だ沢山有るんですね。
とても素敵な作品でした。