劇場公開日 2003年12月6日

「「近代化」と「武士道」は、二律背反ではない。」ラスト サムライ Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「近代化」と「武士道」は、二律背反ではない。

2024年6月13日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

単純

難しい

2003年12月日米同時公開。
トム・クルーズが製作と主演を務めたアメリカ製サムライ映画。

アカデミー賞4部門(助演男優、録音、美術、衣装デザイン)でノミネートされたが、いずれも受賞は逃している。

主な配役は、
ネイサン・オールグレン大尉:トム・クルーズ
勝元盛次:渡辺謙(アカデミー賞助演男優賞ノミネート)
氏尾:真田広之
たか:小雪
勝元信忠:小山田真
サイモン・グレアム:ティモシー・スポール
大村松江:原田眞人
飛源(ひげん):池松壮亮
明治天皇:中村七之助

見てわかるように、明治天皇を除いて実在しない人物ばかりとなっている。
維新期の日本を舞台に、西洋化の波に抗うサムライに加担し、日本人よりサムライらしく戦い抜くのが、トム・クルーズの役どころだ。

ロケの大半はニュージーランドで行われているが、エキストラの大半(約500人)を日本から送り込むこだわりを見せたらしい。
また、屋内の場面は姫路のお寺を使用するなど、細部まで作り込んでいる。

そのような努力を踏まえても、
残念ながら、維新期の日本の空気感を再現するには至っていないというのが偽らざる感想だ。
劇場公開時にも、何か言い表せない「違和感」を感じたが、その正体を言語化できなかった。

最近、改めて本作を観て思ったが、
明治維新期にストーリーをもってきたがために、

◆「国の近代化」と「武士道」がまるきり相容れないもの

として話が進んでしまうのが違和感の元だと気付いた。

勝元(渡辺謙)を、旧来の武士の象徴とするのは許せるとして、
大村(原田直人)は、その対極の価値観を有する日本人ではなく、ただの手段を選ばない悪者でしかない。

結局、この作品はサムライという日本独自の存在を脚本に落とし込もうとしながら、
よく見ると、単なる「非力で旧式装備の善」対「豊富な物量を誇る新式装備の悪」の対決でラストを迎える。

現代にも「侍」はいる、
と信じたい私は、
勝元やオールグレンがラストサムライだった
と認めたくないのだ。

最後にはなるが、映像美、殺陣の美しさには完全に脱帽していることを付け加えて、☆3.5

Haihai