「衝撃を受けた韓国映画」子猫をお願い 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃を受けた韓国映画
韓国映画がしばしば描く、非情な/暗鬱な/旧弊な韓国社会がある。ここにもそれがある。彼女らには出自や貧富の格差がある。世間には因習があり、社会は未成熟で、お金がなければ転落する。お金があっても、お人好しでは生きられない。誰も助けてくれず、どこへも行かれず、努力や精進が実を結ばない。冷たい世を楽観がしのぎ悲観が落としめる。
そんな因習世界と少女たちがデジタルな魅力を備えている。
形容しづらいが、東京の魅力を外国人にアピールするためにつくられた&TOKYOのプロモーション動画がある。
いうなれば、シャッター街だらけの日本の地方都市を、あの&TOKYO動画のように撮っている。
右も左も、老人と貸店舗と駐車場と居抜きしかない日本じゅうの地方都市が、煌煌たる光彩を放って一人勝ちをつづける東京のように魅力的に見える。
──と言えば解ってもらえるだろうか。
本気で目鱗した映画だった。
ジヨン役はオクチヨンという女優だった。
貧困。狭い苫屋に弱った老親と暮らし、あてもなくテキスタイルを描き、長身で言葉少なく、いつでもつまらなそうな顔で、ポケットに手をつっこんで歩く。
完全に心をうばわれた。
いまなお、知らずのうちに、ひとえの女優に──江口のりこやキムゴウンやパクソダムやハンイェリに、ジヨンの面影を探していることがある。それほど印象的だった。
苫屋が瓦解し老親が圧死すると嫌疑をかけられ収監される。心のきれいなテヒ(ペドゥナ)に救われ、二人でどこかへ行く。どこへ行くのか、どこへ行けるのか、解らない。ただその旅立ちは未来と希望を予感させ、この上なく爽やかだった。
映画はLuckではない才気がほとばしっていた。素人のわたしにもそれは解った。
でもきっと作家には沸点があるのだろう。蝶の眠り(2017)を見てがっかりした多数──かどうか知らないが──の子猫をお願いファンのひとりです。