県庁の星 : 映画評論・批評
2006年2月21日更新
2006年2月25日より日劇3ほか全国東宝系にてロードショー
さりげないラストショットにグッとくる
織田裕二は、つくづく「対立のドラマ」が似合う人である。「踊る大捜査線」の熱血ノンキャリア刑事から一転、今度はマニュアル重視のエリート公務員に。とはいえ、立場が入れ替わっても、映画にかぎらず、いい物語が浮かび上がらせるものは、そうそう変わらない。
犯人逮捕も改革も、1人じゃ実現できないってことでは同じ。本庁と所轄から県庁と三流スーパーへと設定は変わっても、やはりここにも仲間の大切さが描き出されるわけで。エリート公務員たるもの、もう少し気が回るんじゃないの? いくらなんでも、こんなに在庫管理がメチャクチャなスーパーはないだろう? などなど、キャラや舞台設定のベタさに突っ込みたくなる部分はあるものの、それでも、いつしか、水と油だったエリートとスーパーの従業員たちとの心が通いあっていくのと同様に、こちらの胸にも温かいものが満ちてくる時間の幸福なことときたら。
たんに面白おかしいだけじゃなく、さりげないラストショットにグッとこさせるあたりは、まさに大人なエンタテインメント。お客さんの入る映画には必要とされているラブストーリーの要素も、一応入れつつ、あくまでほのかなあたりが織田裕二主演作。それがまた、ファンのツボ?
(杉谷伸子)