「美しくも息が詰まるような濃密な空間」花様年華 シネマディクトさんの映画レビュー(感想・評価)
美しくも息が詰まるような濃密な空間
ウォン・カーワイが60年代の香港を舞台に不倫の愛を描くメロドラマで、何よりも主役のトニー・レオン、マギー・チャンの抑制の効いた演技が見事でした。台詞が極端に絞り込んであるので、二人の些細な視線や手の動きでの感情表現が絶妙で、特にマギー・チャンはクールな表情ながら揺れる気持ちを微妙に目元や頬の線の動きで表現しているのが素晴らしいです。また、トニー・レオンのクラシックな伊達男振りも、水際立っていました。主人公二人の愛がプラトニックでストイックな関係だからこそ、より濃密な心の結びつきを感じます。また、クリストファー・ドイルのマギー・チャンの肢体を舐めるような官能的なカメラワーク、細かいカット、衣装・小道具、音楽と全てが見事に調和していました。トニー・レオンが、香港から遠く離れたカンボジアの遺跡の穴に二人の秘密を封印する幕切れも心に残りました。
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