劇場公開日 2006年8月12日

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紙屋悦子の青春のレビュー・感想・評価

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4.0おはぎを作成した。

2019年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 急逝した黒木和雄監督の遺作。戯曲が元になっているだけあって、舞台となるのは紙屋家と病院の屋上だけだ。しかも定点カメラにおけるワンカットが多く、覚えるのも大変そうな長台詞によって観客を映画の中へ引きずり込んでゆく。戦時中という異常な事態ではあるものの、兄(小林薫)と兄嫁ふさ(本上まなみ)、そして妹悦子(原田知世)の3人の会話はホームドラマさながらに笑いを与えてくれるのです。

 悦子が好きだったのは兄の後輩である海軍航空隊の明石少尉(松岡俊介)。しかし、突然舞い込んできた縁談は彼の紹介で整備工の永与少尉だった。美味しい静岡のお茶と甘いおはぎ。趣味について話をすすめるよりも食べ物の話題が縁を取り持つほど微笑ましいお見合い。女学校を出ていても文学や映画の趣味もない悦子の日常は、ほんの些細なことでも幸せを見出せるかのような慎ましい女性だったのです。ふさの言葉から推測すると悦子は寂しがりやのはずなのに、両親を東京大空襲で失っても凛とした態度で昭和を生きる女性でした。

 沖縄奪還作戦に志願した明石が紙屋家を訪れたとき、永与からの縁談にも感情の揺れを見せなかった悦子の心理が大きく変化します。「なぜ戦争が起こるのか?」という疑問は序盤に見せる後年のシーンで語られますが、ただ平凡に生きたいと願う彼女に好きだった人を戦争に奪われる悲しさが堰を切ったように押し寄せてしまうのです。もう家族は失いたくないという心。純粋に祖国のために命を賭ける明石はその彼女の気持ちをも考えて、信頼できる永与に悦子を託したのでした。この手紙の内容はわからないものの、永与の言葉や、会話の中でちょっとだけ見せる明石の悦子に対する想いが観客の想像力をたくましくしてくれる。こうした手法も好きです。

 海軍基地も飛行機整備工場も登場しない。戦争の映像だって一切登場しないのに、ここまで戦争の無情さを伝えてくる脚本の上手さ。戦争の悲惨さはなにも戦場だけではなく、一般家庭の食卓にだってあるんだ。そうした黒木監督の想いが伝わってくる。赤飯とらっきょうを食べれば死なないという噂が本当だったらと願う一般庶民。小さな幸せしか望んでいない人たちがもっと声を上げられる世の中にしなければならないのかもしれません。また、『父と暮らせば』と同じく、残された人の悲しさや苦悩も伝わってきました・・・

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kossy

4.0会話

2016年9月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

今更だが、松田正隆はうまい。会話のディティールを積み重ね世界を多面構造として描き出す。笑いも悲しみもその多面的な一断面だと、改めて思い至る。映像はきちっと寄り添っている。時の残酷さを人の強さと言い換えて、また生きる。原田知世が美しい。

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nob

3.5日本一婆さん役が似合わぬ女優、原田知世。それはもうほとんどコント。...

2016年8月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

日本一婆さん役が似合わぬ女優、原田知世。それはもうほとんどコント。
冒頭からひとつひとつの場面が長い。場面も限られていて演劇みたいと思ったら、やはり戯曲が原作のようですね。
終盤、知世ちゃんの泣きがみどころ。なるほどこれがための原田知世キャスティングだったんですね。
最後にもらった手紙の内容が気になります(笑)

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はむひろみ

3.0じんわり

2016年8月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

原田・永瀬のイキフンコンビが苦手…
最初と最後の年老いた二人のシーンも
あたしはいらない(´ω`)
かえって松岡俊介の演技に釘付けだった
おはぎと赤飯が美味しそうだったなー
あと静岡茶ね
じんわり反戦

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mamagamasako

3.0どこか遠くで戦争が起きているみたいです

2015年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

総合:60点 ( ストーリー:60点|キャスト:65点|演出:50点|ビジュアル:65点|音楽:20点 )

 平和な部屋の中で音楽もなくひたすら喋るだけの舞台劇のような展開が、良く言えば慎ましさの中に哀しさがあるが、悪く言えば退屈。のんびりと静かに台詞だけで進む物語は、戦時中をどうもあまり感じさせない。厳しい生活や爆撃の恐怖もなく、生活感の薄い綺麗な物語に収まってしまっている。
 それと出演者の演技が悪かったわけではないが、いやむしろ個人の演技力はあったと思うが、出演者の役柄の年齢が合っていないのではないか。この時代に嫁に行ったり特攻隊に行くような者ならばまだ20代前半や半ば程度だろうが、出演者は30代ばかりで40近かったりもする。それだからなのか、みんなやけに状況を理解して落ち着いていて、それが当たり前のように見えてしまって、本来あるべき若々しさというか新鮮な戸惑いや恥じらいが見られない。戦争のもたらす心の中の葛藤や恐怖や、頭で抑えようとして理解しようとして、それでも態度に出てしまうようなものが少ない。当時の状況を監督が映画に翻訳する過程において、戦争がこんなにも平和にどこか遠くて哀しいだけに描かれるというのに素直に共感出来なかった。

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Cape God

4.0戦争はいつでも人の幸せや自由を踏み躙る

2014年7月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

悲しい

戦争を背景にした主人公の女性と海軍航空隊同期の両兵士の恋を静かに淡々と描いた映画である。
同期の桜ナガヨとアカシは親友である。またアカシは主人公悦子の兄の後輩でもある。
そのアカシの紹介で悦子はナガヨと見合いをすることになる。
しかし、実は悦子とアカシは互いに内心思いを寄せている。そんなアカシが親友のナガヨに悦子との見合いを勧めたのだ。
その訳は…戦争という化け物が人間らしい生き方を阻んでしまう。
アカシと悦子の思いは切なく哀しい。そしてナガヨの友情と恋情の狭間での痛々しさが胸に迫る。

兄夫婦と3人での夕食中に、戦時絡みのことで夫婦喧嘩をするシーンがある。
兄は興奮して義姉に「わいは日本が負けてもよかとか?」と、声を荒げて言う。それに対して主人公悦子は「義姉さんは何もそげなこと言いよらんじゃなかかねぇ」と、兄を諌める。しかし、義姉は「よかとよぉ、負けても…」と、勢い余って本音を漏らしてしまう。すると、兄は猛烈に怒る。悦子も義姉に謝るように諭す。
義姉は一応謝るが、しかし泣きながら「ちゃんと、赤飯は赤飯らしく食べたかです…。ラッキョウもラッキョウらしく食べたかです…。爆弾で当たらんちゅう思うて、赤飯やらラッキョウを食べたかなかですが…」
このシーンの台詞は戦争の不条理、理不尽さを的確に描いていて身につまされる。そして平凡で平和な日常がいかに大切で幸せであるかを深く認識させてくれるのである。

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髭ジョン