「戦争はいつでも人の幸せや自由を踏み躙る」紙屋悦子の青春 髭ジョンさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争はいつでも人の幸せや自由を踏み躙る
戦争を背景にした主人公の女性と海軍航空隊同期の両兵士の恋を静かに淡々と描いた映画である。
同期の桜ナガヨとアカシは親友である。またアカシは主人公悦子の兄の後輩でもある。
そのアカシの紹介で悦子はナガヨと見合いをすることになる。
しかし、実は悦子とアカシは互いに内心思いを寄せている。そんなアカシが親友のナガヨに悦子との見合いを勧めたのだ。
その訳は…戦争という化け物が人間らしい生き方を阻んでしまう。
アカシと悦子の思いは切なく哀しい。そしてナガヨの友情と恋情の狭間での痛々しさが胸に迫る。
兄夫婦と3人での夕食中に、戦時絡みのことで夫婦喧嘩をするシーンがある。
兄は興奮して義姉に「わいは日本が負けてもよかとか?」と、声を荒げて言う。それに対して主人公悦子は「義姉さんは何もそげなこと言いよらんじゃなかかねぇ」と、兄を諌める。しかし、義姉は「よかとよぉ、負けても…」と、勢い余って本音を漏らしてしまう。すると、兄は猛烈に怒る。悦子も義姉に謝るように諭す。
義姉は一応謝るが、しかし泣きながら「ちゃんと、赤飯は赤飯らしく食べたかです…。ラッキョウもラッキョウらしく食べたかです…。爆弾で当たらんちゅう思うて、赤飯やらラッキョウを食べたかなかですが…」
このシーンの台詞は戦争の不条理、理不尽さを的確に描いていて身につまされる。そして平凡で平和な日常がいかに大切で幸せであるかを深く認識させてくれるのである。
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