「世界の中心で「拒絶」を叫ぶムシェット」少女ムシェット 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
世界の中心で「拒絶」を叫ぶムシェット
初めて見た時は、この映画で何が起こっているのか、ほとんど理解出来なかった。
説明では、薄幸な少女の境遇を徹底したリアリズムで追った作品とか書いてある。ホントかねw
で、二度目に見たら、監督がこの作品で描きたかったらしいことが、朧げながら伝わってきた。
それを一言で言うなら、「世界に対する拒絶」ということになるだろう。
薄幸の少女ムシェットは、型通りの従順で大人しい娘ではない。気に入らない授業では合唱にも参加を拒絶するし、美しく豊かな生活を身に纏う少女たちには拒絶の土団子を投げつける。
ただ一つ拒絶しないのは、母の愛情だけだったが、或る夜、ここにもう一つ、女たらしの密猟者の男が加わった。
男はウソを重ねてムシェットの気を引き、彼女もウソで応じて、最後は処女を失ってしまう。
帰宅した彼女が流す涙は、恐らく悲しみではなく、自己が変容することへの感動のそれであろう。
まさに同じその時、病に伏す母がムシェットに酒を取りに行くよう命じ、それを呑んで翌朝亡くなってしまう。
最後に母が呟くのは「ウンザリよ」の一言であり、彼女は娘の手を借り自殺したのである。自殺幇助させられた娘はたまったものではない。
しかも、翌朝、自分を変容させた男が、自分に対して手酷いウソをついて処女を奪ったこともわかってしまう。
だから、彼女も最後に「ウンザリよ」と呟いて、世話を焼いてくれた婆さんの家のカーペットを汚しまくって出て行く。
そして、婆さんの言うように神様の前に行く時は綺麗な格好をしようと、もらった服を身体に巻き付けながら池の堤から身を投げてしまうのである。
いわば母子ともに、世界に対して中指を突き立てて、「ふざけるんじゃねえよ!」と意思表示しながら死んでいくのである。
自殺はキリスト教圏では大罪だが、さてこの母子を誰が非難出来ますか、というのが監督の声であろう。