I am Sam アイ・アム・サム : 映画評論・批評
2002年6月1日更新
2002年6月8日より丸の内プラゼールほか全国松竹系にてロードショー
だって、みんな泣くために観に行くわけじゃないですか
泣きに行ったつもりだった。
主人公サムは知的障害者。健常者の可愛い娘がいる。2人が引き離されそうになる。自身も親子関係に悩む有能な女性弁護士がサムの弁護を引き受けるが……。「障害者もの」「親子もの」「法廷もの」と、観客を泣かすジャンルベストテンの上位3つの合わせ技だ。泣けないはずがないではないか。
そして、ショーン・ペンが主人公サム――観るまでもなくいいに決まってる。健気で可憐な娘は、本当に健気で可憐。弁護士には「美人」で「キャリア」の2要素をもっとも説得力を持たせることができるミッシェル・ファイファーが期待どおり。さらにローラ・ダーンもやにわに叫びだしたりせず(←リンチ後遺症)寂しげな里親役を好演。
おまけにこの映画、全編にわたってビートルズの曲がさまざまな役割を果たしている。
と、ここまでお膳立てはできたのに、しかしこれが「悪くないけど、なんか泣けない」なのだ。詰め込みすぎで散漫、なのではなく、あざとくならないように描いたのが逆効果。出だしがもう後戻りできないくらい「あざとい」のだから、そこに素直に乗ったほうが正解だったと思う。
だって、みんな泣くために観に行くわけじゃないですか、こういう映画って。
(松久淳)