「【”オーヴァー・ルックホテルの惨劇再び。”ジャック・ニコルソン演じるジャックがホテルに棲む魑魅魍魎に取付かれ、狂気を帯びていく姿が怖くて、怖くて・・。音響、色調を含めて引き込まれる作品。傑作である。】」シャイニング NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”オーヴァー・ルックホテルの惨劇再び。”ジャック・ニコルソン演じるジャックがホテルに棲む魑魅魍魎に取付かれ、狂気を帯びていく姿が怖くて、怖くて・・。音響、色調を含めて引き込まれる作品。傑作である。】
<Caution! 内容に思いっきり触れています。
未鑑賞の方は、本作鑑賞後に、私のレビューの瑕疵を御指摘いただければ、幸甚です。>
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ー 映画内容は、人口に膾炙しているとは思うが・・、簡単な粗筋。 -
■作家を志す、ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は妻ウェンディと、幼き1人息子ダニーと共に、コロラドホテル:オーヴァー・ルックホテル(展望ホテル)の冬季管理人(ホテルは雪のため、10月~5月まで閉鎖される・・)として採用され、3人で延々と山道を3時間半走るシーンから物語は始まる。
ダニーはイマジナリー・フレンドのトニーが脳内に居り、トニーとして喋る際には、人差し指を折りながら”奇妙な声”で喋る・・。
ウェンディは夫に対し、オドオドしながらも、忠実に従っている・・。
且つて、一度だけジャックは酔った勢いで自分の原稿を散らかしてしまったダニーの腕を”少し強く”引っ張り脱臼させてしまった苦い過去がある・・。
そして、物語は章立てで進む。
<1.インタビュー>
・ジャック・トランスがコロラドホテルの冬季管理人として採用されるかどうかの面接のシーン。ホテル支配人から告げられる事実。
【1970年の冬の悲劇 冬季管理人だったグレイディが孤独に耐え切れず、精神に異常を来し、妻と双子の幼き娘を斧で切り刻んだ・・】
<2.ホテル閉館の日>
・ホテルの料理長のディック・ハロランが初対面にも関わらず、ダニーを笑顔で”先生”と呼ぶシーン。ハロランが真面目な顔でダニーに”シャイニング”の持ち主であると伝え、決して【237号室】に近づいてはいけないと諭す。
”何かあると、【痕跡】が残る・・”
ー ハロランは、この時点で、トランス一家の今後に不安を感じていた事が巧みに表現されているシーンである・・。勿論、観客にも・・。心がざわつき出す・・。-
<3~7.>
・ホテルが閉館されてから、一カ月後。その後、火曜日、木曜日、土曜日、月曜日、水曜日とテロップが示され、観る側にはジャックが徐々に精神に異常を来していく過程が描かれる。
そして、ダニーはホテル内で、水色の服を着た双子の少女達から”ハロー、ダニー・・。遊びましょう・・”と告げられ、直後惨劇のシーンを見る・・。
ダニーは父に”ママとボクを苛めないで・・”と伝えるが・・。
ー 劇中に度々現れる双子の姉妹の姿と、溢れ出る血の波のシーン。
じわりじわりと観る側に恐怖が伝わってくる・・。怖いが鑑賞を止められない・・。ドンドン、キューブリックの仕掛けた罠に嵌って行く・・。-
・そして、ジャックは誰もいない筈のバーに足を運ぶと、無人だが煌々と灯りの灯るシャンデリア・・。
カウンタ―に座ると、慇懃な表情のバーテンのロイドがいつの間にか立っており、バーボンの氷割ロックを頼むジャック。3年前に、自分がダニーにしてしまった脱臼の件を語る。
ー 徐々に、ジャックが”コロラドホテル:オーヴァー・ルックホテル”の魑魅魍魎に触れていく・・ファーストシーン。
自宅でTVを見ていたディック・ハロランの驚きの表情の入れ方も絶妙である。
【237号室】に導かれたジャックが浴槽から出てきた全裸の女性を笑みを浮かべながら見つめ・・、抱擁。だが、その女性はいつの間にか腐乱した老婆になっている・・。ー
・ディック・ハロランはホテルに電話するが、繋がらない・・。
【RED”R”UM・・・】
・バーはいつの間にか、大勢の人々で賑わっている。何の疑問も持たず、カウンターに座り、バーテンのロイドに、バーボンの氷割ロックを頼むジャック・・。
席を立った際、ウエイターの老人とぶつかり、服が汚れ・・、二人は真っ赤な色調のトイレで会話を交わす。
ウェイターの老人”グレイディ”は、丁寧にジャックの服装の汚れを拭いながら
”息子さんは外部の者を連れ込もうとしている・・、黒人の料理人を・・。
【我儘ですな・・、母親が悪い・・。良く躾ける必要があります・・。少し厳しく・・。】”
ー 怖い、怖い、怖い、怖い・・。ー
<8.8am>
ー 劇中流れるガラスを引っ掻くような耳障りの音も、心臓の鼓動のような、ドックドックという低音の音が延々と響き、徐々に音量が上がる。見ている側の鼓動も上がる・・。-
・ディック・ハロランは深刻な表情で、雪上車でホテルに向かう。
・ウェンディは夫がタイプライターで打った、大量の原稿を目にする・・。そこに延々と記されていた言葉。
”All work and no play makes Jack a dull boy " ”All work and no play mekes Jack a dullboy" ”All work and no play mekes Jack a dullboy" ・・・
ウェンディの驚愕の表情と背後から突然、声を掛けるジャックの言葉
”傑作だろ?”
- 劇中の”恐怖”の白眉のシーンの一つである。夫の狂気に気付く妻。
”あちら側:”ホテルに棲む魑魅魍魎の世界”に行ってしまった夫・・。-
・階段を上り逃げるウェンディを追うジャック。ウェンディは必死にバットで夫を殴りつけ昏倒した夫を食品倉庫に閉じこめ、雪上車で逃げようとするが、バッテリーが壊されていた・・。
<9.4pm>
・閉じこめられたジャックを扉の外からグレイディが、挑発するシーン。
そして、扉の鍵が”カチャン”と開けられる音・・。
・ハロランが漸くホテルに到着するが・・。
ー ここのシーンの、初見時の絶望感は今でも覚えている。
ハロランがウェンディとダニーを”シャイニング”の力で助けると思って、一縷の望みを託していただけに・・ー
・眠っている母の枕もとで、RED”R”UM・・と繰り返すトニー:ダニーは恐怖の余り出て来ない・・。そして、扉に書かれた文字。
【”かの有名な”ジャックが斧で、扉をたたき割り、その隙間から狂気の笑顔を浮かべた髭面を覗かせるシーン・・。】
”ウェンディ・・。ただいま・・。”
逃げる二人。
びっこを引きながら、追いかけるジャック。
その光景を見て、血まみれのグレイディが笑いながら口にする言葉・・
【”盛会じゃね・・”】
ー もう、もう、もう、怖すぎます・・。-
ダニーが雪中の迷路の中、必死に逃げるシーン。斧を持って追うジャック・・。
<ラスト、ホテルに飾られた、1921年7月4日の舞踏会の写真の中で、笑みを浮かべながら映っているジャック。
そして、彼も又、”コロラドホテル:オーヴァー・ルックホテル”の魑魅魍魎の一員になった・・。>
■蛇足
1.初鑑賞は、学生時代の級友の部屋である。
彼は映画館の息子であり、頻繁に映画館の無料券を振舞ってくれた、私が映画好きになったきっかけを与えてくれた貴重な友人である。
その彼が、夜中に一人で今作を鑑賞していたが、余りの怖さに鑑賞を中断し、翌日私たち数名が呼び出され、”皆で一緒に”鑑賞した。が、それでも、充分に怖かった・・。
2.今作から39年後に、大人になったダニーが自らの過去に決着をつける映画が公開されるとは、思いもしなかったなあ・・。
<2024年4月5日 一部改訂。今作品は私にとってホラー映画の金字塔であり、哀しき家族の物語である。亡きスタンリー・キューブリック監督作品の中でも、印象的過ぎる作品でもある。>
続夕陽のガンマンのレビューに高瀬鎮夫氏の字幕の事を書きましたが、その時氏のエピソードで、完全主義者のスタンリー・キューブリック監督は、高瀬鎮夫氏が担当した「シャイニング」の日本語字幕を英訳させて(当然元の英語とは違う)チェックしたが、そのキューブリック監督との交渉も字幕担当の高瀬氏本人が直接当たったとの事です。(ご存じでしたか?)
4月5日に改訂されたのでレビューの上に上がって来て初めて拝読しました。素晴らしいレビューにつまらない指摘ですいません。
ジャック・ニコルソンがタイプしていた部屋のTVに何故か「おもいでの夏」が映っていたのを覚えています。
名レビューとして評価つけたいです!!感謝です!^ ^ m(_ _)m
ほんままた見返したくなります。山々の風景、ホテルの美術は本当に美し過ぎます。美は恐怖への入り口として最高の要素ですよね!
怖い!
NOBUさんのレビューが怖いよ!(笑)
いえ、数々のシーンが甦えるお見事なレビューです。
スティーブン・キングはジャックに自己投影して書いてましたから、性格改変は自分自身を情け無い愚者に変えられてしまったような気がして怒ったのもあるんでしょうねぇ。
ドクタースリープ未鑑賞なんです。キング、キューブリック、双方を納得させたストーリーとの事で、観るのが楽しみです^ ^
NOBUさん、コメントありがとうありがとうございます。
素晴らしいご友人がいらしたんですね。羨ましいです。
学生の頃都心に住んでいたので、いわゆる名画座に行きまくっていました。
二本立てや三本立ての特集上映とかオールナイトとかで、劇場で体力と勝負していた若い頃が懐かしいです。
NOBUさん、シャイニング、好きです。レビュー拝読して怖さが蘇りました!映画館の坊ちゃんであるお友達の件、かわいい~!皆で固まって怖いよ~!目に浮かんでしまう!ところで「キム」さんまだ見てないんです。朝いちで予約までしたのに、前日の仕事で頭が疲れて起きたら映画もう始まってた~でした。仕切り直しです…。