「40年経っても溶けない冷たい個性が印象的な名作かつ問題作」シャイニング よねさんの映画レビュー(感想・評価)
40年経っても溶けない冷たい個性が印象的な名作かつ問題作
冬の間閉鎖されるオーバールックホテルで閉鎖中のメンテナンスを行う管理人の職を得た小説家志望のジャックは妻ウェンディと息子ダニーを連れてホテルにやってくる。支配人からは過去に管理人が一家惨殺を起こしたことを知らされるも、誰も訪問者がない静かな環境は執筆活動に好都合と意に介さないジャック、ジャックの傍若無人さに逆らえない従順なウェンディ、そして不思議な霊能力を持つ内気な少年ダニーは広々としたホテルでの生活を楽しんでいたが、やがてじわじわと忍び寄る怪奇現象に翻弄されることになる。
上映当時はホラー映画が苦手だったので40年も未見のままでしたが、今の感覚で観るといわゆるホラー映画とは一味も二味も違う特殊な作品。冒頭のゆらゆら漂うような空撮から漂う禍々しい雰囲気、不吉さを増幅する夥しいシンメトリー。『2001年宇宙の旅』のように一切のナラティブな表現を排しているので特殊能力シャイニングもぼんやりとしていてとにかく薄気味悪い。様々な映画でオマージュが捧げられているのを浴びるほど観てきたので残念ながら大きなサプライズは感じませんでしたが、それでもジャックが一心不乱にタイプライターで打った文字には背筋がぞっとする狂気がくっきりと浮かび上がっていて、さすがは映画史上に残る傑作だと実感するとともに、原作者のキングが本作を毛嫌いした理由もなんとなく腑に落ちました。これで準備が整ったので早く『ドクター・スリープ』が観たいです。
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