「まさに色んな人にかけられた呪いを解く物語。」ハウルの動く城 ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
まさに色んな人にかけられた呪いを解く物語。
何回観たかわからんけど、先日改めて観たら印象に残ってようやく言語化できたことがある。
物語の主軸のひとつに、「美しくあらねばならない」という呪いからの解放がある、というところだ。
これは主人公のソフィーのみでなく、ハウルにも、荒地の魔女に当てはまる。
ソフィーは長女であること、華やかな妹や母とは自分が違う(と感じている)こと、色んな呪いを自分にかけている。荒地の魔女の呪いにかけられる前から既に色んな呪いにがんじがらめにされてたのがソフィーなのだ。
というか荒地の魔女の呪いは内面の年齢というか自己認識のイメージを具現化させる呪いだったのだと思う。
だからソフィーは荒地の魔女におばあさんにされて驚きはするも割とすぐに受け入れているし、物語の進行に伴って見た目年齢が変化してる。
(眠っている無意識ときは本当の姿に戻っているし、ハウルの前で若い姿に戻りかけても「年寄りである」ということ口にした瞬間おばあさんに戻るなど)
最後は若いソフィーに戻るけど、それは荒地の魔女の呪いが解けたというよりは、自分の意思で行動し続けた結果、自分にかけていた呪いをソフィー自身が解いた(意識が変わった)というところなんだろうな。
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続いてハウル。ハウルも美しさに囚われている一人だ。
ハウルは元々美しい青年なのだけど、魔法の力で髪を染め、自分が美しいと思う自分になろうとしている。
それはたぶんカルシファーとの契約で心臓を手放し、「心」が欠けている自分に自信がないことも関係している(愛してくれる女の子を求めるのも同じ理由かな)。
その欠けた部分を、自分の自身のなさを補うために美しさに執着している(そう思うと「美しくなければ生きていても意味がない」発言と癇癪にも納得)。
あと悪魔との契約で怪物のような自分が生まれたことも怖かったのかも。
でもハウルはソフィーを見つけたことで、守りたいものができる。自分の美醜よりも大切にしたいものができたハウルも、「美しくなければ生きていても意味がない」という呪いから解放されている。
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続いて荒地の魔女。
荒地の魔女も、魔法で美しさと若さを保ち続けていた。
かつては偉大な魔女だったらしい彼女も歳を取り、肉体の衰えでできなくなることが増え、おそらくありのままの年齢の自分が受け入れなくなったのかもしれない。
彼女も美しさの呪いに囚われていたといえる。
サリマンに強制的に魔法を解かれた後は、そんな自分を受け入れてくれるソフィーやハウル一家に出会って、彼女も呪いから解放されたんじゃないかと感じた。
そしてラスト、頑なにハウルの心臓を離さない彼女を抱きしめるソフィーに完全に呪いを解いてもらったのではないかと思う。
というかあのシーン、改めて観るととても良かった…。
他にも色んなテーマを含んだ作品だと思うけど、この旧来の固定観点のような「呪い」(たとえば古いジェンダー観など)を解く作品群は最近よく目にするので、そんな中でこの作品を観るととても面白かった。
そして細かいことは差し置いても、改めてハウルはとても魅力的なのだった…。さすがジブリ屈指のイケメン。