劇場公開日 2002年1月19日

「言外の「嫌さ」すら見せつける職人芸のカット構成」仄暗い水の底から ビスコットさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0言外の「嫌さ」すら見せつける職人芸のカット構成

2024年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

原作はごくあっけない短編ですが、その映像化作品としては過不足を感じません。
原作者の「水嫌い」と「人間不信」が遺憾無く汲み取られています。
カメラワークがとにかく巧みで、言外の「嫌さ」にもピントが合っています。

要約するなら主題は「孤独」です。
いわゆるシングルマザーの生活が、最も「都合の悪い」仕方で侵されていきます。
「理解されなさ」と「理解できなさ」の板挟みに追い詰められます。

もちろん幽霊も出てくるのですが、
こともあろうに幽霊も不都合な成り行きを手助けします。
「こともあろうに」が全部起こる。立て続けに起こるので圧倒される。

「実社会的な不都合」が超自然的な恐怖を補強するのではなく、
むしろ超自然的な恐怖が「実社会的な不都合」の延長に位置付けられます。

終盤にかけてはB級っぽい演出が若干目につきますが、
それでも雰囲気の連続性は失われておらず、見事な統率です。

主要キャスト陣の名演と妥協の無いカット構成、
何度でも見返すことのできる珠玉の一作だと思います。

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ビスコット