仄暗い水の底から : 映画評論・批評
2002年1月15日更新
2002年1月19日より日劇東宝ほか全国東宝邦画系にてロードショー
あの「リング」の原作&監督コンビが日常世界の恐怖を描く
怖い、と言うよりも居心地が悪い。本作はあの「リング」シリーズの鈴木光司・中田秀夫コンビの最新作だが、今回は「見たら死ぬビデオ」というSFがかった設定は登場せず、誰にでも起こる恐怖を描いているからこそ、身近で居心地が悪いのだ。
原作は東京湾をテーマにしたホラー連作短編だが、映画はその舞台をベースに、離婚・親権問題を抱えた母親の苦悩と、母娘が住むマンションで続発する怪奇現象が同時進行する。
恐怖の増幅装置の1つはエレベーター。窓付きのやつだ。誰も住んでいない階で、フロアが変わる瞬間に見える人影(この感じは公式サイトでも味わえる)、1人で乗っているのに、知らない子供が防犯カメラに写る。そして、雨。「セブン」ばり土砂降りのなかで、ポツリとたたずむ少女。その顔は何かで塗りつぶされたように真っ黒だ。
現実の問題と得体の知れない恐怖。原作にないエピソードを巧く構築したのは、中田作品の常連の高橋洋ではなく、若手の中村義洋と鈴木謙一。ホラー作品は初めてだが、高橋脚本と比較しても遜色はない。
主演は初のホラーとなる黒木瞳。多少演技に熱が入った感は否めないが、それでも彼女が味わう恐怖はひしひしとこちらに伝わってくる。
(編集部)