「『大人になんかなりたくない』」初恋(2006) いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『大人になんかなりたくない』
上映が2006年、そして13年経ち、二人の俳優が問題を起こしてしまったことに感慨深いモノがある作品である。原作は多分、アイデア+企画モノといった装丁なのであろう。作者と物語の主人公名が同一ということで、独白のプロットという作りはセンセーショナルを掻立て、世間へのアピールは一定数得られるであろう。まぁ自分が想像する実際の犯人像はその筋の輩だとは思うが・・・。
ナンバーが控えている、いわゆる足が付いてるお金をロンダリングできる世界は通常では困難故、カタギでは出来ない芸当だ。
本作とは関係無い話はここまでにしておいて、60年代後半の混乱とモラトリアムがどす黒く溶け合った新宿が舞台である本作は今では考えられない程、若者が背伸びしていた時代でもある。その世界観を、例えフィクションであったとしても映像化して、それを鑑賞するとその狂おしい位の切迫さと引き替えの自由さを表現されていて、羨ましくもあり、又別世界として一線を引いてしまったりする。そんな時代の空気感、雰囲気の匂いをそこそこふりまきながら、本題である3億円強奪事件へと展開してゆく。只、実際の本作はイの一番に宮崎あおいの為の作品といって過言ではないフォルムなので、原作よりもディティールはそぎ落とされてしまっている故、随所でアッサリ感は否めない。編集でカットしてる場面もそこそこあるだろう。しっかりとパブリックイメージを守りつつ、事務所に大事にされている感が鼻につくが、プロモーションだから仕方がない。濡れ場があるかと思った元KAT-TUN情婦は、おためごかしのバストトップだけでお茶を濁す程度だし、ドきつさは演出不足。もっとあの時代のエログロナンセンスを押し出して欲しいと思うのは、自分が狂ってしまっているのだろうか・・・。あの時代の日本に於いて、一体何%位の若者がああいう世界に浸っていたのか、それとも殆どが黙々と目の前の現実にひれ伏しながら生きるために歯を食いしばっていたのだろうか、その辺りをあの時代の生き証人達と語りたいと思わせる内容であった。学生運動、左翼、そして爛れた性生活・・・ サルトルやランボウに誰もが解釈が出来る、そんな時代を追体験してみたい。