半落ち : 映画評論・批評
2004年1月7日更新
2004年1月10日より丸の内東映ほか全国東映系にてロードショー
テーマは重い。考えさせられる映画
チャレンジ精神溢れる企画である。「このミステリーがすごい!2003年度版」等で1位となった横山秀夫氏のミステリー小説の映画化だが、ハッキリ言ってキャストは渋め。加えて柴田恭兵が県警本部捜査一課強行犯指導官役だ。あの「あぶない刑事」シリーズの柴田が!だよ。実際に撮影初日、サングラスをかけて“あぶ刑事”オーラぷんぷんで来たらしい(笑)。しかし、佐々部清監督と原作の力量か。柴田を含め、寺尾聰や樹木希林はもちろん、検事役の伊原剛志まで皆、魅せてくれる。泣かせてくれるのだ。
映画は、アルツハイマー病に冒された妻を殺害した元敏腕刑事(寺尾)が、自首するまでの空白の2日間の謎を追うミステリーだ。テーマは重い。愛する人が壊れていく姿を目の前にして、どういう行動を取るべきか。介護の経験がある人もない人も、身につまされる問題だけに、寺尾演じる梶に感情移入しやすく物語にどんどん引き込まれてしまう。
原作のファンにしてみれば、謎解き部分の面白みは物足りないかもしれない。その分、先に挙げたキャストの熱演も手伝って、ヒューマンドラマ部分秀逸。優劣で判断するのではなく“考えさせられる映画”として価値ある1本である。
(中山治美)