劇場公開日 2006年4月29日

「流れに逆らい犠牲の出る覚悟を持って主張をするマスコミ」グッドナイト&グッドラック Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5流れに逆らい犠牲の出る覚悟を持って主張をするマスコミ

2013年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合:65点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 60
音楽: 65

 マッカーシーの赤狩りは行き過ぎであった。冷静になって考えられる現在では誰もが納得するであろうわかりやすい主題である。
 しかしそれが猛威を振るっていて権力を持っている最中に公然と批判することはやはり勇気がいる。反撃を受けて自分も無事ではいられないかもしれない。今後も彼らの人生は続いていくのに、職を失ったりいわれのない批判を受けたりするかもしれない。それでも間違っているものを間違っているというには、それらを考慮してそれなりの覚悟をもってしなければならないことである。そしてやはり彼らは反撃を受け犠牲を出す。上司や会社との折衝、視聴者の反応、スポンサーへの対応。そういうものにも気を使わなければ報道など出来ないということを取り入れているのはいい。
 現実には赤狩りは勢いを増し、映画に登場する人物たちだけでなく数多くの罪無き人の犠牲が出た。どれだけ赤狩りを食い止める効果が現実にあったのかわからないが、それでも彼らの行動は賞賛されるべきものである。

 赤狩りが理論的におかしいのがわかっているのにこれほど行き過ぎてしまった背景には、共産主義との対決だけではないとも言われている。それを使って競合相手を攻撃したり政治的立場を強めたいとかという一部の人々の、アメリカにおける内部抗争があったという説が有力である。
 だからただ単にマッカーシーを批判するのではなく、何故マッカーシーや赤狩りがそんなに力を持ってしまったのかという時代背景を少しでいいから映画の中に取り入れて欲しかった。そうでないと何故彼らの行動が大きく支持を得られず赤狩りを止められなかったのかがわからない。その意味では物語は単純すぎると感じる部分もある。

 映画は当時の古臭さを出すためか白黒である。だが個人的には現在わざわざ見づらい白黒フィルムを使う必要性をあまり感じない。数十年前に撮影された何千年も前の時代を舞台にした多くの映画、例えば「十戒」や「ベン・ハー」ですらカラーで撮影されているのだから、たかだか数十年前が舞台ならばカラーで撮影すればいいのではないかと思う。白黒にしないとその時代の雰囲気が出ないというのは言い訳に過ぎないように思える

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Cape God