「突然のどんでん返し」17歳のカルテ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
突然のどんでん返し
総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 75
ビジュアル: 65
音楽: 65
映画は中盤過ぎまでは殆どを病院の中だけでたいして特筆する出来事もなく平凡に描かれていて、正直それほど面白くもなくちょっと退屈気味といってもいいほどであった。ウィノナ・ライダー演じるスザンナはたまたま親との関係からくるストレスなどでアスピリンを一気飲みしてしまって精神病院入りしたが、それほど精神を病んでいるとも思えず普通に生活をしている。周囲にはスザンナよりもっと精神を病んでいる人がいるが、スザンナ程度の人ならば社会にいくらでもいるだろうといった感じ。この病院内での日常がいったいどれほど重要なんでしょう。
だがスザンナがアンジェリーナ・ジョリー演じるリサと共に外に逃亡してから急展開が起きる。本音で喋り自分の思いを相手に伝え追い込まなければ気がすまない攻撃性の強いリサの姿を、元患者の自殺という形で嫌と言うほどに見せ付けられる。最初はとまどいながらも比較的簡単に病院にあまり違和感もなくそれまで溶け込んでいたスザンナ。だが逃亡後にリサと別れスザンナ一人が病院に戻ってきてから、だんだん彼女にも視聴者にもこの病院内が実は異常だったという風に見えてくるのだ。
それはリサが数週間後に連れ戻されてきたときからはっきりする。突然帰ってきた彼女は疲労しやつれ、目は麻薬患者のようにうつろで危険な雰囲気でまるで別人のよう。病院内で強さを持って自由に正直に生きるリサに少し憧れや尊敬を持っていたスザンナだったはずなのに、今では彼女に対して失望を感じ異常さを感じている。リサはその攻撃性ゆえに所詮社会的に不適格な破綻者なのだと気がつき、だからこそリサはここに8年もいるのだと理解する。それは他の患者たちについても同様で、友情を感じつつも一歩引いた位置から冷静に彼女たちの異常さを分析していけるようになる。
そう、それまで普通に溶け込んでいたここの世界は、実は異常なのだとわかってしまった。大半を占めた途中までのやや退屈な日常が、そのいきなりのどんでん返しへの伏線だった。その描き方が面白い。
アンジェリーナ・ジョリーの演技だけが注目を浴びているようだが、ウイノナ・ライダーも負けていないと思った。しかし実年齢が役柄とかなり離れていてタイトル通りの年齢には見えないのは残念。