「毒気満載、くたばれハリウッド!」ザ・プレイヤー odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
毒気満載、くたばれハリウッド!
冒頭からスタジオを闊歩するソニー一行や実際の「卒業」の脚本家バックヘンリーが続・卒業の脚本を売り込むシーンなど面倒臭くなる予感がプンプンです。
ロバート・アルトマン監督自身もハリウッドの商業主義には嫌悪むき出しのお方でしたし、原作・脚本のマイケル・トルキンも家族ともども映画に失望していたらしく監督と思いが一致したのでしょう、劇中でも「自転車泥棒(伊1948)」のラストシーンが映されますが、それだけで胸が締め付けられますね、映画が弱者に寄り添っていたころの名作ですので失われた映画の象徴、メタファーなのでしょう。
それにしてもご両人は酷いブラック・ハリウッド物語を創ってしまいました。
アルトマン監督は脚本より役者の自発性を尊重する演出家でしたから脚本家と揉めることは日常茶飯事、反面、役者連中には熱烈なファンも多く劇中劇のジュリア・ロバーツはノーギャラ出演だったようです。ご本人のカメオ出演の多さも監督の人望の賜物でしょう。
一応サスペンス風ではありますが伏線の様で紛らわしい仕掛けばかりで困惑します、警備主任のウォルターがまるで目撃していたかのように主人公を問い詰めるのでてっきり黒幕と刷り込まれました、また頻繁に謎の尾行者が出てきたりで思わせぶりな演出が鼻につきます。皮肉にばかり力を入れず少しは娯楽性にも技の冴えを見せて欲しかったのですが刑事がウーピー・ゴールドバーグでタンポン振り回して大笑いでは端からサスペンスや社会正義など監督の眼中にはないと思ったら、案の定、無罪放免です。
脅迫者も別の作家と分かりますがいわば業界内輪のドロドロ感しか残りませんし、殺人者が社長にまで昇進し、捨てられた元彼女や間違って殺された作家、こともあろうにその彼女と結ばれハッピーエンド風で終わる酷さは後味の悪さ抜群です。
ジュリア・ロバートの劇中劇でも悲劇で終わるはずがモニター試写で不評、ハッピーエンドに一変、確かに観客はハッピーエンドが好物ですが興業優先で口を挟む上層部に辟易していたのでしょう、それなら見掛けだけハッピーエンドにしてやろうとのこのひねり、さすがアルトマン監督、毒気の処方に掛けては長けていますね、やられました。