ドリームキャッチャー(2003) : 映画評論・批評
2003年4月15日更新
2003年4月19日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
破ってはいけない、キング映画化の掟
Q:スティーブン・キングの映画化で、もっともやってはいけないことは何か。
A:原作をそのまま映画化すること。
ある特殊な力を持った子どもたちが大人になり、何かに引き戻されるように故郷の町に帰ってくる。彼らは人類の命運を決するある役割を担っていた――というわけで、スティーブン・キングとしては長編「IT」を思い出させる話である。これを、ノスタルジックな同窓会映画の佳作「再会の時」を作ったローレンス・カスダンが監督する、というのはわからない話ではない。だが、カスダンはやってはいけないことをやってしまった。
キング映画化が往々にして失敗するのは、原作の多くが長大な小説で、そのままでは2時間の枠に収まらないからだし、圧倒的な筆力によってねじ伏せるように書かれているものを、ただ映像に置き換えても説得力に乏しいからである。そのまま映画化すれば、詰め込みすぎでわかりにくい、意図のはっきりしない作品になるのは当然だろう。
01年に発表された原作は、キッチュで悪趣味な侵略SFの寓話として書かれており、そこには交通事故で死にかけたキングのささやかな悪意まで感じられるのだが、カスダンの演出力の弱さは、それを伝えてくれない。
(添野知生)