トリュフォーだのゴダールだのヴィスコンティだのと映画談義を楽しみながら、長回しはどの作品が何分何秒あるとかのオタクぶりも発揮しながらその長回しのオープニングで観客を魅了する。ぐぐっとストーリーに引きずりこまれるも、所々に見せる『ベニスに死す』など名作のオマージュが光っているので伏線にも驚いてしまう。ちょっと笑ってしまったのは『華氏451』のような交錯する音読シーン。ゴダールなんて知らないし、トリュフォーも嫌いだし、他にもいっぱいあったオマージュを見落としているかもしれないことが残念でなりません。(長回しは『ザ・プレイヤー』らしい・・・)
そんな映画オタクぶりを織り交ぜながら進むストーリーは元映画監督の教授の指導で学生たちが撮る「タイクツな殺人者」を劇中映画として扱ったもの。やたらと古い映画に詳しいところをみると、映画学校とはこんな雰囲気なんだろうなと想像してしまいます。テーマとしては実際に老婆刺殺事件を起こした高校生の犯罪心理に迫る映画なのですが、学生たちがその不条理な実像に近づくために苦悩する姿を上手くとらえていました。
劇中映画の主人公である池田(中泉英雄)の冷めた表情とゲイっぽさのおかげで、犯罪心理よりもむしろ被害者の立場の恐怖感をも味わえました。高校生って怖いよ、みたいな。結局は“試したかった”、“実験だ”、“殺すってどんなだ”といった心理をスタッフたちも体感したくなる過程を、恋人がいる異性にキスをするといった行動も取り入れて独特の雰囲気で描いています。サブストーリーとして、ちょっとした浮気心で恋人以外とキスをした久田(前田愛)の恋人に嘘(キスした相手)をつくシーンや、老けた大学生大山(田口トモロヲ)と教授(本田博太郎)の設定も面白かった。
そのまま犯罪再現ドラマを扱ったとしたらそれほど面白くなかったのでしょうけど、クライマックスでは色々と想像力をかき立てる工夫がなされていたので、終わってからも考え込んでしまいました。どっちなんだよ・・・