「事件そのものが映画的で面白く迫力も有りだが、物足りなさも」突入せよ!「あさま山荘」事件 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
事件そのものが映画的で面白く迫力も有りだが、物足りなさも
クリックして本文を読む
テレビに多くの人間が釘付けになっていたあの事件の背後で、県警と警視庁の主導権争いがあったことは知らなかった。米国映画でさんざん見た警察の縄張り争いが、国民性も違う日本でも同様に有るのは、どうしてなのか、不思議な気がした。
大きな球による壁破壊、放水攻撃、突入、2名殉死、人質確保、犯人確保と忠実に事実をなぞる。国民を熱中させた様に事件そのものが映像的で、映画として面白かった。また突入後に指揮官が殺られ、機動隊が大混乱に陥った描写も、臨場感に基づく迫力が相当に有った。
ただ、見終わった後に物足りなさも感じてしまった。犯人側の描写が全くないのは、まあ一つの見識として理解もできるが、主役である役所広司による佐々淳行の使命感や気持ちの動きがあまり伝わってこなかった。一方、藤田まことが演じていた後藤田長官の、国家組織を守り犯人を英雄化しないための、人質の命最優先、犯人生捕等のリーダーとしての指示の的確さは、史実らしいが唸らされた。とは言うものの、この事件が日本及び日本人にとってどういうものであったのか、原作が悪いのかもしれないが、その考察が全くなされていない様に見えたことが物足りなさに繋がっている様に感じた。これだけ映画的に魅力的な素材であるだけに、残念に思ってしまった。
コメントする