アメリカン・サイコのレビュー・感想・評価
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共感してしまった
人は誰しもが殺人を犯しているのでは?
頭の中でなら。毎日のようにそれは起こる。
思い通りにならない店員に、ライバルの同僚に。それらの不満は視界に映る不潔な路上生活者、娼婦、野良猫にも向けられる。
私の解釈では、彼の吐く汚い言葉は、殆どが妄想である。よく漫画などで妄想カットが挟まれ、後に主人公が我に返り実際は何も起きてないという演出があるが、この主人公は我に返らない。
そのため、どれだけ暴言を吐いても相手には聞こえてないか無視されているように見える。心の声だからだ。
本人も述懐しているように、殺人がアイデンティティになってしまっているのだ。親のレールで成功しただけの中身のない退屈な自分の。
名前よりも名刺が大事で、中身よりも見た目が大事。他人の名前で呼ばれても動じない、自らも他人の名前を騙る。自分の名前で呼ばれたときは「人違いです」病的に自分がないのだ。
婚約者は言う「お父様が社長で働かなくても暮らせるのになぜ仕事するの?」彼は答える「仲間になりたいからだ」ある種のカテゴリにはまった生活様式や服装をすることで辛うじて人としての輪郭を保っている。
冒頭で完璧なスキンケアを施しながら自分語りが入るが、そこで彼は透明なパックをする。そのパックが色つきでなく透明なのが1つの暗喩に見える。
マスクを被っているが、ひと皮向いても、同じ。
途中まで騙されかけたが、彼はサイコパスとは違うと思う。
幼い頃から周りが期待する型に添った自分を演じるうちに、本当の自分が分からなくなってしまったのだ。育む機会がなかったというほうが正しいかもしれない。
だから自分が『ほんとうに』好きなことや楽しいことが分からない。人を愛することもできない。人より秀でていることや、自分が不快にならないことだけが重要。完璧なボディメンテナンスにそれが現れている。
男が…という人もいるけど、女にもこういう人はいる。
自分にしか関心がなく、セックスの最中も気になるのは自分のボディーライン。噛み合わない会話。ステータス自慢。
音楽は聴くけれど、感想は何かの丸暗記のようで、一方的に語るだけで人と共有できず、好みも支離滅裂。ただ雑音を遠ざけるだけの装置のようにも映る。一方で必死に人間的な感受性に触れたがっているようにも見える。
安定剤漬けのセックスフレンドは、いかにも空虚さを抱えたニューヨークの上流階級の娘で、どこかしら彼と波長が合っている。
彼はすぐ嘘をつく。しかもすぐにバレる嘘だ。虚言癖のように。後半、自分でも何が嘘か本当か分からなくなっている様子が、刑事への受け答えに現れる。
仕事の書き込みが皆無の、女の名前と暴力的お絵描きまみれの手帳を発見した秘書は、恐怖よりも哀しみを浮かべている。子供が病んでいるのを発見した親のように。
彼は電話やエクササイズをしながらビデオを流しているが、1つは3PのAV、2つ目はチェーンソーを振り回す男のホラー。私はこれがヒントだと思う。
創作(妄想)と現実の区別がなくなっていく。
この映画はその境界線が分からないように出来ている。
もちろん実際にやっている可能性もゼロではない。
でも重要なのは、彼や我々が「本当の自分」などというとき、「本当」なんて存在するのか?そんなものは最初からどこにもないのではないか。薄っぺらい現実に嫌気が差した時、本当を作り上げ、現実を偽りにするのかもしれない。
いくらなんでも。
いくらHBS出身で親の経営する会社だとしてもちゃんとした金融機関で27歳で個室と秘書を持てるか?主人公も同僚も全く仕事をせず飲んだくれてばかり。何人殺しても警察は動かない。全てあり得ない。リアリティがなさすぎ、と思ったら全てが現実ではなかった?というオチ。これはないだろう、、、
考察が楽しめる映画
クリスチャン・ベール。
なんですか?この男から見てもセクシーな俳優さんは?シャワー浴びるシーンなんか、かっこいいし、いちいち真似したくなっちゃうじゃぁ、ありませんか。エンディングは、あれっ!ここまでの流れは全て主人公の妄想なの??となるが、実は世間は他人に対してそれほど関心を持っていないということを指摘した風刺映画なんじゃないかな。SNS全盛の今、スマホすらない20年以上も前に未来を予言しているようで、考察も楽しめるいい映画だった。
タイトルなし(ネタバレ)
80年代、アメリカのプレッピー?
ヤンエグ世代。
名刺のデザインや人気レストランの予約が取れるかでマウントしあい、恋愛も友人付き合いも表面だけの空っぽ。
風刺が効いて真剣にマウントする姿は滑稽で笑えた。
裸でチェーンソー振り回す姿も
怖いんだけれどどこか笑える。。。
ホラー、スリラーとは一線を変えたムービー
クリスチャン・ベール。。。いいわ、やっぱイイ!!
シネマート新宿さんの企画で鑑賞。良い機会だから「植物系」以外を全部観ようと決めて。
まず、まず!とにもかくにも、クリスチャン・ベールがピッカピカに光ってます。いーなー。いーなー。
いい塩梅で狂ってる・・・いや、狂う寸前の綱渡り状態をなんとまぁ素晴らしく演じ切っていることか。
目の泳ぎ方、取り繕い方、エリート然とした立居振る舞い、程よくビルドアップした身体、ちょっとした心の動きが読み取れそうな表情。
いい!この作品の緊迫感、緊張感、人間の危うさ・・・彼の演技がなければこれほどの説得力は生まれなかったのでは?さえ思っちゃうほどでした。
ただの殺人ではなく「ちょっと尋常じゃない人」の殺人のプロセスは見ものです。殺さなくてもヒリヒリします。
ストーリー・演出も面白く、よくできているなぁと思います。
殺人シーンで怖くなるというよりも、ヒタヒタとそこに至っていくプロセスに恐ろしさを感じますし、人間が壊れていく内面の恐怖みたいなものが伝わってくる・・・精神的な怖さがうまく描かれていたかなって思います。わかりやすい異常シーンもありますが・・・主人公がどんどん怖くなっていく感じがいいですね。
また、ストーリーもよく練られていると思います。現実?虚構?な見せ方含め。
主人公のみにスポットライトを当てて「サイコ」な人を、そうなっていく人を描く・・という単純なものではなく(と思いますが)、そもそも1980年台後半のエリート金融マン達の人間味の無い、表面的な人間付き合い、判を押したように同じようなライフスタイルを競うような人間達の薄気味悪さ・・・そこから生まれてきたサイコな主人公・・・当時は生まれてきた土壌自体を皮肉っているように感じましたし、作品内でも、うまいこと人間味を感じさせない演出がなされていると思いました。
けど、こーいう世界が好きな人も沢山いらっしゃるんでしょうね。それを否定するつもりは無いですが、僕はちょっと気味が悪かったです。出てくる人物、全員嫌いです。
そんな世界で精神破綻していく主人公は一番人間味があったのかな?とさえ思いました。
精神破綻しないと若くして成功者(経済的、社会的)になれないのかなぁ?
探偵役のウィリアムデフォーが天使に見えました(笑)
あと、ネタバレっぽくなってしまいますが・・・・フィルコリンズとヒューイルイス&ザニュースが気の毒になりました。あんなに印象深いシーンで曲を使われるなんて。。。。本当に気の毒です。
ススーディオ、とっても大好きな曲だったのに・・それは変わりませんが・・・聴く度に思い出しちゃうなぁ・・・罪な作品です(笑)
ホイットニー側は許してくれなかったのかな?
秀作です!
現実と妄想の狭間で狂気が滲みだす
80年代ならではのブラックジョーク感、時計仕掛けのオレンジ的なノリ...
ヤッたの? ヤッてないの?
面白いとは聞いていたものの、先延ばしにしていて、Netflixの配信が終わるタイミングに駆け込みて鑑賞。
あーおもしろかった!
し、めちゃウケる。
こんなにウケたのは「未来世紀ブラジル」以来かも知れない。
とにかく終始皮肉が効いててこちらをくすぐってくる。
ウォールストリートに生きるヤンエグたちの暮らしを当時のカルチャーとともに描くブラックコメディ。
オリバー・ストーンの「ウォール街」ではまだ食うか食われるかの騙し合いが描かれていたが、本作では仕事をしている気配そのものがない。
形式的に出社はするけど、頭にあるのは他人から見て自分がイケてるか、イケてないか、ただそのうわべだけ。
そのマウンティング合戦はほんとトレーディングカードとか、メンコの強さを競う小5男子と変わらないノリ。
白人・男性・エリートのみが参入できる戯れ。
町山智浩の評論本にも取り上げられていたけど、まあこういう連中はバブル日本にも実在したらしい。
ただ、彼らに「好きなものがない」というのはどうだろう?
空虚さを自覚するゆえに売れ筋のポップソングに過剰に移入する主人公は、「好き」とは言えないのだろうか。
その歌が好きなんじゃなく、投影された自己像を愛しているのだとしても、ほとんどのエンタメなんてそういうものでは?
自分の分身だから特別な思い入れがある。というのが愛ではないとしたら、「タクシードライバー」のトラビスに自分を重ねる秘宝界隈も同罪なのでは?
果たして自己愛の強い人間にはなにかを愛することはできない?
真の愛か否かなど、誰が何を基準に決めるのだろう?
こんなにも仕事してないのかね。
名刺バトルにテーマを込めて
あなたはどっちがお好み?
パトリック・ベイトマン(クリスチャン・ベイル)はウォール街で、働くエリート。高収入でイケメン、高級アパートに住む彼は連続殺人鬼のサイコ野郎だった!!
っていうサイコスリラーと言うよりはブラックコメディでしたねー。
結構グロいのかなと思いきや、直接的なシーンはあんまりなく、わりと観やすかったです。
なんせ、クリスチャンベイルのぶっ飛んだ演技が最高でした!
主人公のベイトマンは見た目は完璧だけど、全然満たされてなくて、常にピリピリしてる。
エリート仲間との間で繰り広げられる名刺マウンティングは本当に意味不明だし、高級レストランの予約が取れないくらいで怒るなよとも思うけど、見栄の張り合いで見た目重視の人エリートたちにとっては最重要事項らしい。
自分より先に高級レストラン予約するやつ、自分よりセンスのいい名刺作ってくるやつは、そっこーでベイトマンの餌食になるのですが、恐ろしいシーンのはずなのになんか笑える。
くだらないことに一生懸命になって、イライラピリピリしているベイトマンはとても滑稽だけど、こう言うことって日常生活の中にわりとあったりする。
他人から見たらどうでもいいことでも、自分にとっては重要なことってある。
それが、傷つけられたり、バカにされたりするとやっぱり嫌だなと思う。
そんな気持ちをかなり誇張して描いてるだけなのかも。
ラストの意味はどっちの解釈もできる。
本当は全てベイトマンの妄想でしたor本当に殺人鬼だったけど、周りの人の無関心によりベイトマンの罪は無視されるの2パターン。
私的には後者のラストに一票。
自分の商売のために殺人現場をリフォームして素知らぬ顔でお客様に売りに出す不動産業者。
友人の名前もろくに覚えないエリート仲間や弁護士。
ベイトマンの必死の叫び声も他人の無関心の前にはなすすべも無く、殺人の告白すら相手にされない。
文書で読むと狂気に満ちたどうしようもない世の中で、なんか暗い作品のように思うけど、あくまでコメディなので、なんか笑えてしまう。
すごく不思議な作品でした。
残酷描写に多少の免疫があれば、楽しめる作品です。
ひとり残らず
最後、存在を無視され、それでもなお「オレの苦しみをひとり残らず味あわせてやりたい」と、周囲を見渡す主人公。
ひとり残らず殺して、地球上にひとりぼっちになりそう。
ポール殺しを追ってた刑事が、主人公の存在を認めてくれる人物なのかも。
その刑事ですら、「ポールとロンドンで食事した」という証言のせいで離れていくんでしょうけど。
そう考えると、秘書と、別れたくないと泣く女の子の存在が中途半端だな。
それにしても、映画前半では、名刺ですら見栄を張り豪勢な暮らしを見せつけるバブル男たちの薄っぺらい姿を、笑いながらもどこか羨ましく見てしまったが、ラストシーンでは、よりくだらない井戸端会議のオバちゃんぐらいに見えてしまう。
主人公が弁護士に存在の希薄なツマラナイ人間と言われた瞬間に、映画の観客の目まで変えさせる演出いいね、と思った。
序盤、名前沢山出てきてついていけないかも??って思ったけど、前半に人物・レストラン・ブランドの名前をこれでもかというぐらい出すことで、ラストシーンがより効いてるんだな。
勉強になりました。
流行り、もてはやされるもの、仲間、会社…共同幻想で構築されるものは、いきつくところはひとりぼっちなんですかね。
わたし個人は友だちがめっちゃ少なくダンナぐらいしか心許せる人いないから、そんな関係でも羨ましいと思ったり。
「この後も捕まらないのか、やっぱり逮捕されるのか」までは描かないクールな映画。
意外と(失礼!)面白かったアタリ映画でした★
音楽のセンス
結果、全てが彼の妄想だったのか!?
完璧主義を貫き通すのは実に大変で、誰の為に?自分の為に?一体全体、何の為に生きているのだろう?
あれだけ完璧でいて音楽の趣味が悪いのは、敢えてなのだろう?って個人的問題!?
TVに「悪魔のいけにえ」が映って、オマージュのようにチェーンソーを狙い定めて落とすシーンは、しっかり描写しても良かった?
C・ベイルの鍛えた体を見ると、"ブルース・ウェイン"が日々のストレスでトチ狂ったが如く、殺人衝動を起こしているように思える!?
現実か、それとも妄想か?!
⭐久し振りに鑑賞しました⭐
クリスチャン・ベイルのサイコっぷりは良かったですね!
人を殺害することでしか、自分を表現出来ない悲しさよ…。
会社社長の娘と付き合い、仕事も順調で、高級アパートメントに住み、仕事仲間とはスーツのブランドや、行き付け高級料理店、名刺の交換で優劣を競うだけ…
何と希薄な人間関係なのだろうか。
彼女も、パトリックの話など半分も聞いていない。
パトリックの負の感情が爆発する時だけ、本当の自分で居られるなんて、これはもうフラストレーションの塊。
アパートメントでの、奇声と共にチェーンソウで走り回るシーンも、誰一人として部屋から出てこない無関心さよ…。
後にこれが、ただの妄想なのか 究極の無関心なのか、少し混乱するかな。
殺したはずの、ポールとロンドンで食事をしたと言うお抱え弁護士も、パトリックを別人だと思ってるみたいだし、本当にポールなのかも謎。
皆がみんな無関心過ぎやしないか?!って。かなり解り易く 極端な社会風刺と思うけど(笑)、この病んだ世の中、誰もが鬱積した思いを抱えてる可能性があるんだと理解すれば、広い意味でパトリックがサイコなのではなく、正にアメリカン・サイコなんだろうなと思う。
タイトルなし(ネタバレ)
ポール・アレンを殺してしまったパトリックは、失踪という工作をほどこし犯罪を隠そうとしたが、ある日探偵(デフォー)の訪問を受ける。常に冷静さを保ち、自宅ではアダルト・ビデオを見ながら腹筋を繰り返すが、誰かを殺したくてしょうがない。そして娼婦を拾う。
婚約者イヴリン(リース・ウィザースプーン)もいるが、愛人もいる。覚えきれない固有名詞が飛び交い、ハイソな仲間とは名刺の品評会。ここでは笑ってしまった。ジェネシス論やヒューイ・ルイス、ホイットニー・ヒューストン論も・・・
結局、彼は自分よりもいい名刺を作ったことに腹を立てる。殺人を思いとどまったように見せかけて、死体は冷蔵庫にぎっしりつまっていた事実。心理的な面白さを追及はせず、どきりとするシーンや、世間の目。金持ちは犯罪など冒さないという偏見にも警鐘を与えていたのかもしれない。
しかし、緊迫感もなく、平坦なシーンばかり。一番盛りあがるのは、素っ裸でチェーンソーを持って娼婦を追い回すクリスチャン・ベイルの姿だろう。ジェイソンの亜流かと思ってしまった。
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