劇場公開日 2001年5月3日

アメリカン・サイコ : 映画評論・批評

2001年5月1日更新

2001年5月3日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

意外!? スラップスティックな一本

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B・E・エリスの原作は、実に胸くその悪くなる小説だった。80年代の物質主義な消費社会に浸かった美形のヤンエグが狂気にはまり、残忍な殺戮や女性への陵辱をえんえん繰り返す。ところがこれを、メアリー・ハロン監督はアッサリと料理。出来上がったのはスリラーでもスプラッターでもなく、スラップスティック。歪んだ価値観に振り回されて「ステイタスな自分おたく」と化した青年をめぐるブラック・コメディになっているのだ。

残虐描写を避けて風刺に的を絞るのはいいとしても、もうちょっと「時代のそら恐ろしさ」があぶり出されてよかった。主人公にモノローグでくどくど「病んだ自分」だの「孤独」だのを語らせるのもいただけない。が、男の悲劇ならぬ喜劇性、愚かさ加減だけは十分。上質さを競う「名刺じゃんけん」でピクピクしたり、ポップスのうんちくを語り、セックスしながらマッチョ・ポーズを鏡に写してうっとりするこの男ときたら、「ハイ・フィデリティ」のおたくと同レベルで笑える。

主演のベールはそのへんのところをわかっていそうで(「シャフト」の酷似役もユーモアだろう)、なかなかの好演。ディカプが演じてたら、コメディとしても白けただろうな。

若林ゆり

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