劇場公開日 2005年2月5日

アレキサンダー : 映画評論・批評

2005年2月1日更新

2005年2月5日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー

かつてない緻密さで描かれる古代世界、だが…

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謎多きアレキサンダーの生涯を、臣下だったプトレマイオスの回想で綴るアイデアは秀逸。冒頭、アレキサンダーが自ら設計し、建設を命じた理想の文化都市アレクサンドリアの景観を見せ、古代のロマンに期待が高まる。以後映画は、アレキサンダーの興味深い少年期を経て、4万の兵で25万のペルシャ軍を破ったガウガメラの戦い、解放者として歓喜に迎えられたバビロン入場と、大遠征の道程を壮大な映像で綴っていく。かつてない緻密さで再現された古代世界の描写に圧倒される。

しかし後半は、インドにおける象部隊との激戦など、戦闘シーンには息を呑むもののドラマは迷走してしまう。オリバー・ストーン監督は、アレキサンダーが未知の世界を目指した理由については見る者に結論を委ねた。なのに、なぜか監督は、両親から受けたトラウマや神話の英雄への羨望といった負の動機ばかりを示す。異文化から何を学び、何に魅了され、いかなる世界帝国を築こうとしたのか、夢や理想は描かない。知の遺産を受け継いだプトレマイオスにも何も語らせないのだ。

監督はベトナム戦争の体験を思い出し、指導者の飽くなき野望に翻弄された部下たちの悲哀に引きずられたのだろうか?

山口直樹

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