「切なく、哀しすぎる友情の物語」メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
切なく、哀しすぎる友情の物語
トミー・リー・ジョーンズが監督した映画が有る事を知らなかった私なのだが、やはり彼程のベテラン俳優と言われる人達の中には、確かに助監督経験が全く無くても、良い脚本にさえ出会えれば、映画監督経験初作品でも、映画を巧く完成させる技があるようだ。
ここで、想い付くままに監督で有ると同時に立派な俳優でもある人物の名前を挙げるなら、チャップリンが一番先に思い出されるが、俳優兼その後に映画監督となった人物で、秀作を監督し続けている人と言えば、クリント・イーストウッドの右に出る人物は現在のところいないだろう。
ロバート・レッドフォードも私はとても大好きな映画作家であるし、そして俳優としての芝居と言う面では必ずしも名優とはいかないが、ウディ・アレンも素晴らしい監督であると同時に俳優でも有る。
日本でも、竹中直人は個性派俳優であると同時に、立派な映画監督と言う事が出来ると思うのだが、みなさんはどうお考えになられるだろうか?
あそうそう、来月公開予定の「カルテット」はダスティン・ホフマンの初監督作品と言うからこの作品も楽しみである。
それから、ショーン・ペンも監督しても素晴らしい才を発揮している人だし、フランソワ・トリフォーも忘れてはならないね。
改めてこう考えてみると、後から後から未だ未だ大勢の素晴らしい名優兼監督の名前は出て来そうだが、この「エストラーダの3度の埋葬」から話しが脱線しているのでここで話しを戻すが、トミー・リー・ョーンズの手に因る本作品も、決して悪い作品では無い。と言うより、彼がこの様な純な物語を映画に撮りたいと望んでいたのか?とスクリーンから受ける今迄に彼が演じ重ねて来たキャリアからはイメージが出来ないような意外性の有る素晴らしい友情物語を彼は世に送り出してくれたのだ。
物語の舞台となるのは、アメリカの片田舎の町、そこはまるで時間が止まったままで動く事など無い様な世界の果てと言っても申し分のない辺境の地、そこへ国境警備員になったマイクとその妻は都会から引っ越して来た.が、都会での刺激的な生活に馴染んでいる為に、2人は中々この田舎での平凡過ぎる事件性の無い退屈な生活に溶け込めないでいるが、ある些細な事故をきっかけにこの2人は事件に巻き込まれて行くと言うお話だ。
そして主演の田舎の冴えないカウボーイのピートをトミー・リー・ジョーンズが演じているのだが、彼が今時のアメリカには、絶対にこんな純な人がいるのか?と呆れかえるほどの生真面目な一面を持っている男を好演しているのだ。
そして、このピートと言う年老いたカウボーイと彼の親友である、不法滞在者としてメキシコから国境を越えてやって来たこのメルキアデス・エストラーダとの間に生れた堅い友情の絆の物語で、素朴に生きる人間の尊さと、友情で結ばれた2人の間に交わされた約束を守り抜こうとする、不器用なピート。そしてエストラーダを事故死させたマイクとピートの不思議な旅物語は静かな感動を私に運んでくれた秀作であった。