劇場公開日 2023年6月24日

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こわれゆく女のレビュー・感想・評価

全25件中、21~25件目を表示

3.0夫婦の寝室

2017年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

 精神病で入院する妻ばかりでなく、夫もかなり壊れている。
 この夫婦のコミュニケーションの難しさは、子供たちを含めた第三者がそこへ入り込む時に顕著となる。
 かかりつけの医師を自宅に呼ぶことで、ジーナ・ローランズが次第におかしくなっていくところなど、早く夫婦だけにしてやりたい気持ちで、こちらの心がヒリヒリしてくる。この夜は、ラストのシーンを除けば、この二人が水入らずになれた、ほとんど唯一の瞬間だったはずだ。
 二人にとっては、これほどまでに二人きりの時間を持つことが難しい。この状況を映画の中で、物理的に規定しているのが、この家の夫婦の「寝室」である。
 まず、夫婦の専用の寝室が存在しない。
 彼らは食堂兼用の部屋を、来客用のテーブルを片付けて、折り畳まれたベッドを展開することによって二人の寝室とする。
 家族だけの食事スペースはすぐ隣にあるのだか、来客があれば少々開閉にコツが必要な扉をスライドさせて広い空間を作り出すことができる。
 皮肉にも、その寝室兼客間から家族用ダイニングに入ると見えるのが、「private 」と印された扉である。この奥に台所があり、この家の主婦の固有空間がキッチンであることが示されている。
 この扉の印は非常に重要なアイコンとして機能する。
 行きずりの男を家に連れ込むも、その男が翌朝見ることになるのもこの扉のサインになる。
 最もプライバシーに関わるはずのベッドインが、プライベート空間の外で行われていた。この事実だけでも、彼女の言動以前に奇妙な気分になってしまう。
 夫婦の寝室と、彼らの性的関係の不可能性について言及した作品として、我々は森田芳光「家族ゲーム」を知っている。
 この二作品ともに家の間取りに強く興味が湧く。もう一度観なおして、二つの家の図を書いてみるのも面白そうだ。

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佐分 利信

3.5これは芝居なのか

2015年11月27日
iPhoneアプリから投稿

どんどんこわれてゆく女
凄まじいジーナローランズの演技
狂気さえ感じる
それを支える夫を演じる
ピーターフォークの包容力

元々は舞台の予定だったそうだが
緊迫感がより高まりそうで
舞台も見てみたかった

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JYARI

3.5ん?

2015年10月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

見てて奥さんが変なのか旦那さんが変なのか途中悩んだ。パニック障害にも見えるしダンナの異常な愛も怖いし。結局愛し合ってるんだよな~子供のママを守る姿にも助けられた家族のあり方。なのかも。。

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愛純

4.0カサヴェテスの名作

2015年3月17日
iPhoneアプリから投稿

苦しくてたまらない一本だった。

ルイス・トマスの「人間というこわれやすい種」という本がある。
人間というものはこわれやすい生物だ、だから尊いんだ、という意味だ。そして、ヒトの本性の深いところにある特徴は、誰かの役に立ちたいという衝動だそうだ。

「人間はこわれやすい」ということと「人間は自分以外の何かの役にたちたい」ということは繋がっている。

メイベルの中心にひそむ矛盾、葛藤、弱点は、人間の本質なのかもしれない。

ブルーカラーのピーターフォーク。男臭がして色気があった。
「かけがえのないもの」と向き合ったとき、どう育んでいくのかを考えさせられた。我々の永遠のテーマが、どこにでもある家庭の中に描かれていた。

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Raspberry

4.5これが夫婦、なにはともあれ

2012年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

難しい

幸せ

一家の主婦がこわれていく様と巻き込まれる家族が、独特の生々しさで描かれています。
ジョン・カサベテス監督、1975年の作品です。

主演は、監督の奥さんでもあるジーナ・ローランズとピーター・フォーク。刑事コロンボのピーター・フォークも大好きですが、盟友ジョン・カサベテス監督作の彼は、またひと味違うって感じでした。

話がどんどん進むわけでもなく、ちょっとかったるい感じですが、ジーナ・ローランズの狂気の演技は凄味があります。
愛情はあるのに上手く回っていかない夫婦の焦燥感や、落ち着かないバツの悪い空気感がとても生々しいです。

終盤は緊迫し、とても印象的でした。これが家族、これが夫婦。
ラストの二人の表情はずっと忘れないだろうと思います。

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グッドラック