座頭市 : インタビュー
北野武監督インタビュー
編集部
――監督の思う今の時代劇とは?
「いかんせん、お金がない。秀吉の10万人の大軍ってどうすんのって言われたら、それはCGじゃない? でも、本当は5000人でもいいから本物を使いたい。カメラワークで隊列なんかはごまかせるから。それの基本的な予算がないっていうのは、やっぱり小作品になってしまうわけ。1人の武士にスポットを当てたりね。今の時代劇っていうのは要するに逃げ回るわけ。時代劇の背景には、電柱1本立っててもダメ。CGで消せっていうんだけど、消すとどうしても違和感が出てくるし。山に行ってここなら誰もいないし昔っぽいって撮ったりするんだけど、トラックの轍があったりしてやっぱり撮れない。今の時代の山を見ると、これ江戸時代の景色じゃないよな、とかさ。妥協の連続なわけ。ひとつくらいはちゃんとしたオープンセットを建てれば、と思うんだけども、結局ありもので撮らないといけないからつらいんだよね」
――座頭市というキャラクターについてどう思われますか?
「頭の毛が黒くて地味な杖ついてトボトボ歩いてりゃ、勝さんの座頭市がなかったら“何だこりゃ”って言われるわけだけど、そういうものだと皆知ってるという前提でやったわけ。でも、我々の世代では誰でも知ってるけど、もう十何年経っていて、意外と知らない人も多いんだよね。それならそれでありがたいと」
――座頭市はヒーロー? それとも悪役?
「イラクに対するアメリカみたいなもんだね。イラクにはフセインがいてしょうがねえと思って暮らしてるところにアメリカがやってきて独裁者を追い出した。でも、医者も薬もないし、それだったら独裁のほうが良かったっていうのあるじゃん。今度の「座頭市」はマカロニ・ウェスタンだからさ(笑)。あいつさえ来なきゃ町は平穏だったのに、みんな斬りやがって(笑)。座頭市はそういう役回りだから、祭にも参加せずにトボトボ歩いて行っちゃう。ヒーロー物って、“それを言わない約束でしょ”っていう設定のもとで、例えば桃太郎侍とかが来るわけじゃん。座頭市も急に現れて急にいなくなる。それに対してどこに行ったもナニもあるかって言ってるわけ。(ヒーロー物は)楽しけりゃいいんだって所はあるよね」
――どんな観客に観てもらいたいですか?
「これはエンターテインメントだからね。お金払えば誰でも観られるんだから客は選んじゃいけないと思うし。観てくれるなら誰でもいいというか。おじさんたちは結構喜びそうな感じするけど、若い人たちはわかんないな。あまりにもCGとかミュージックビデオとかパパパっと行くのに慣れちゃうと、下手すると2~3分で終わっちゃうような体力しかない子がいるんだよね。それでも、まあ観られるだろうと思うけどね。何十年も同じプロ野球やってて相変わらず喜んで見ている人もいるし、新しい野球を……とは思わないよね。エンターテインメントってのはそれなりに興味のある人がそれなりに楽しんでくれればいいかな、と思う」
――今後やってみたいキャラクターは?
「『帰ってきたたけちゃんマン』とか(笑)。俺のキャラクターだから文句は言わせないけど、俺が死んだあとリメイクされたら、それは恥ずかしいよね(笑)。狙ってるのは、『ターミネーター対座頭市』。座頭市は日本からきた“ターミネーター”。機関銃対仕込み杖。弾きたらカンカンカンカンって避けてさ」
(C)2003「座頭市」製作委員会
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