宇宙戦争 : 映画評論・批評
2005年7月5日更新
2005年6月29日より日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
殺戮と破壊は「プライベート・ライアン」ばりだが
H・G・ウェルズの原作が、どれほど読まれているのか知らないけれど、原文そのままな感じのオープニングのナレーションに、ちょっと驚き、期待が高まるプロローグ。
そして、トム・クルーズ扮するニュージャージーの湾岸労働者を父に、崩壊した家族がスケッチされる様は、スピルバーグ監督の得意とするところだが、従来の作品とは逆に、不在になるのは母親で、父親の視点からストーリーが語られていく。ほどなく天変地異が起こり、地の底から太古から埋められてたという(これは映画のオリジナル・アイデア)エイリアンの戦闘機械トライポッドが出現し、破壊と殺戮の限りを尽くし始める。この惨劇シーンは「プライぺート・ライアン」のノルマンジー上陸作戦を彷彿とさせるほど迫力満点で、モトをとれた気分にさせてくれる……のだが、面白いのも前半の1時間まで。
母親のいるボストンに向かう父と娘、息子3人の必死の逃避行、サバイバルは、ティム・ロビンス演じる男を含め、キャラの行動が不可解になり、なんの説得力も感動もなくドラマはボロボロで、信じられないエンディングを迎える。およそスピルバーグらしくなく、即製拙速の脚本がひどすぎた。
(高橋良平)