アンブレイカブル : インタビュー
M・ナイト・シャマラン インタビュー
(聞き手:渡辺麻紀)
現代のヒーロー神話を作り出したかった
世界中で大ヒットを飛ばした「シックス・センス」。そのおかげでM・ナイト・シャマランは、もっとも次回作を期待される監督になってしまった。
「名誉なことです。1年に2、3本しか映画を見ない人が私の作品を待っていてくれる。映画人にとってこんな誇らしいことはない」
プレッシャーを感じなかったかと尋ねると、こう答えたシャマラン。しかもその新作「アンブレイカブル」は、またも相当に奇妙な映画。ヘンさでいえば「シックス・センス」以上だったりするのだ。
「私は、空想の世界さえ現実的にしてしまうような、そんな話が好きなんです。ほら、大火で赤ちゃんだけが生き残ったみたいな話があるでしょ。ああいうのを聞くと興味をそそられてしまう。そういうのを耳にするたびに人間の力を信じたくなるんです」
ブルース・ウィリス扮するデビッド・ダンは、自意識のまったくないままに中年を迎えた<アンブレイカブル>人間、つまり無敵の男。それに気づかせてくれるのがアメコミ・ギャラリーを経営しているおたく野郎イライジャことサミュエル・L・ジャクソンなのだ。
「アメコミは子供のころから大好きでした。でも、ガレージに3000冊も積み重ねるようなマニアじゃない。アメコミに限らず、神話や伝説、ヒーローものとか、大好きだったんです。だから私はここで、現代の神話を作り出したいと思ったんです」
言い方を換えるなら、現実のフィールドでヒーロー神話を語ること。アメコミ・ファンが見ればこの映画が、あの「スーパーマン」をベースにしていることがよーくわかるようになっているのだ。が、だからといって、その手のマニアだけがわかる、おたく映画にはなっていないところがヒットメーカーでもあるシャマランの大人なところ。「シックス・センス」でもホラーのかたちを借りながらコミュニケーション問題を浮き彫りにしたように、今回も現代の抱える問題を描いている。
「自分の居るべき場所、やるべきことを見つけた人はキラキラしていますよね。反対にそうじゃない人は寂しい感じがしてしまう。この映画ではそんなこともテーマにしました。この世で与えられた目的を認識して、自分のいるべき場所を見つけることがいかに大切か、です。これは人生においてとても重要なことですから」
そういうシャマランはもちろんキラキラしていて、まさに「やるべきことを見つけた人」。では「居るべき場所」はハリウッド?
「いや、私は、私が家族とともに住んでいるフィラデルフィアから離れるつもりはありません。私の映画に登場する市井の人々はみんなこの街の人々がモデルだし、私も普通の生活を送っている。ハリウッドじゃあ、そんなこと出来ないと思いますよ(笑)」
つまりシャマランは「居るべき場所」も見つけているということ。映画が異彩を放ち輝いているのも当然なのかもしれない。