劇場公開日 2002年8月10日

トータル・フィアーズ : 特集

2002年8月16日更新

大作が続くベン・アフレック。しかし、彼のどこがいいのか? 一般人にはちいとわかりにくい、その魅力を「大ファン」を自認する杉谷伸子氏が熱筆! なるほど、ベンってそうだったのか!

だから、ベン・アフレックはイイの!

杉谷伸子

Photo: KAORI SUZUKI
Photo: KAORI SUZUKI

ベン・アフレックのどこがいいのか? そりゃ、すべてである。190センチの長身とはいえ、確かに顔もデカいかもしれない。いなせな空気も、そこらの兄ちゃんと紙一重かもしれない。でも、そこに明らかに、ただの兄ちゃんと違う何かがあるのがベン・アフレック。ブロンド&ブルー・アイズの甘いハンサムじゃないのが、とってもリアルな男を感じさせるっていうんですか? 完璧なハンサムじゃないのがカンペキなの。

しかも、デカすぎるガタイ(それも好き)のおかげで、芝居も陰影に欠けると思われがちだけど、あれで結構芝居もうまい。「グッド・ウィル・ハンティング」の粗野だけど友だち想いのチャッキーも、「アルマゲドン」のガサツな一本気男A.J.も、「きっとベンってこういう奴なんだろうな」と思わせたでしょ? 一連のマット・デイモンとの友情崩壊騒動で、悪いのはみんなベンになってるあたりも、スクリーンのイメージの影響が大きいに違いない(「マットとはうまくいってる」とベンは言ってました)。

そして、こんな具合に素顔が透けてるように感じさせつつ、愛を抱かせる。それこそが、スターの条件。未来の大物CIAアナリストの新米時代を演じた「トータル・フィアーズ」では、これまたオスカー脚本家でもあるベン(すんません、ブランドに弱くて)の知的な一面も、若さゆえの自信も情熱も迷いもうまい具合にジャックにいかされているのだ。これまで、彼をアホ・スター扱いしていた方々も、「ベンって、かわいいのね」と認めてくださっているのは、すなわち、彼らもベン本人の魅力に気づいてくれたってこと。しかも、彼、既にハリウッドのビッグ・スター感は漂わせつつ、トム・クルーズみたいなキラキラ感がない。いや、あえてキラキラ光線を出さない(と、好意的に解釈)のも、スターというより実はアクター指向なのが滲み出て、ますます将来への期待度アップ。

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でも、俳優ベンのいちばんの味は、その女心に鈍感ってこと。なにしろ、「チェイシング・エイミー」でも女心と愛の機微がわからずに幸福を逃したホールデンが似合った彼である。素顔のベンも、かなり女心に鈍感ちゃん。「トータル・フィアーズ」では、原作では既に妻であるキャシーがまだ恋人という設定が、ジャックの成長物語には効果的といいたかっただけなのに、「僕が夫役を真剣に考えるべきだと思ってるんだね。ジェニファー・ロペスと結婚するんだよ。ケビン・スミスの映画のなかの話だけど」と、彼を愛する女心にまるで気づかない(泣)。でも、マットとの友情崩壊報道が流れているのは知らなくても、ジェニファー・ロペスとの熱愛報道は知ってて、ジョークで交わした余裕が素敵。と、これまた好意的に解釈していたのに、彼女のバースデイ・パーティで親に紹介されただと(怒)?! でも、好き。ベンは派手な女に振り回されるのがよく似合うから。それに、男は繊細すぎるより、鈍感なほうがカワイイぞ。

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