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人工知能が搭載された無人ステルス戦闘機の暴走を止めるため、米国海軍に所属するエリートパイロット3人が空を駆ける航空アクション。
陽気なエリートパイロット、ヘンリー・パーセル大尉を演じるのは『コラテラル』『Ray/レイ』の、オスカー俳優ジェイミー・フォックス。
「無人ステルス戦闘機」vs「海軍が誇るエリートパイロット」!こりゃ面白くなりそうだぞっ!!
と意気込んで観てみたのだが…。
いやこれなんの映画っ!!??
想像していたよりもステルス戦闘機とバトらないし、それどころかクライマックスでは主人公と戦闘機AIが和解した挙句、協力して北朝鮮🇰🇵と戦い始めたんですけど…。
そういう事なのか?そういう事でいいのかこの映画??
今作を鑑賞してみて強く思ったのは、やっぱり20年くらい前のアクション映画が一番古くさく感じちゃうということ。
CGのクオリティ、キャラクターの性格、女性や恋愛の描き方etc…。どれをとってもかなりキツい。今の時代だったら全部アウトでしょう。
特に主人公がかなりキツい。主人公ベン・ギャノンを演じるジョシュ・ルーカスは、トム・クルーズとニコラス・ケイジを足して2で割ったら3余ったみたいな顔してる。そんな顔した人が『トップガン』(1986)のトム・クルーズそのまんまなキャラクターを演じてるんだから、もうパチモン臭がすごい…😅
トム・クルーズ以外がトム・クルーズを演じたら悲惨な事になるという事実を、観客はこの映画を通して学べるはず。この映画の価値はそこにある。…青リンゴをセクシーに齧りはじめた時ゃ、DVD叩き割ってやろうかと思ったぞ…。
この映画から受ける違和感の多くは、米軍への信頼感の厚さからくるものなのではないだろうか。
一応「戦争は悲惨だ!」とかセリフでは言わせてるけど、米軍による他国への軍事介入には肯定的。
ミャンマーのとあるビルにテロリストが集結。一網打尽のチャンスだが失敗すれば民間人を巻き込んでしまう…という展開。ベンの超絶テクニックにより民間人の死者を出すことなくテロリストは殲滅され、それにより彼はヒーローとして祭り上げられるのだが、いやいや一歩間違えば民間人を大量に巻き込んでしまう作戦なんかそもそも実行すんなよ!!
なんでお前のテクニックと民間人の命を勝手に天秤に掛けるのよ。賭けるのは自分の命だけにして下さい。
当時はイラク戦争の真っ只中。自国の軍隊を批判的に描けないという事情もわかるが、それにしてもこの映画のアメリカ・ファーストっぷりは酷い。
ロシアの領空を侵したのも、北朝鮮に無断で侵入したのも100%アメリカのせい。にも拘らずロシアのパイロットを撃ち落とす様や北朝鮮軍を殲滅する様はヒロイックに描かれる。そんなことされても「いやいや悪いのお前らじゃね?」という感情しか湧いてこないんだけど。
ハッピーエンドっぽく終わったが、どう考えてもこの後第三次世界大戦が勃興しちゃうよね…。
思うに、核の脅威に晒されるのはロシア、軍人が殺されまくるのは北朝鮮、放射線被曝したのはタジキスタンと、東側諸国にばかりリスクを負わせる物語だからなんか嫌な感じになっちゃっている。アメリカが引き起こした大騒動なのにアメリカには一切危険が迫らないなんて、そんな無責任な道理は通らんでしょう。
ステルス戦闘機が暴走し、ホワイトハウスやペンタゴンなど、アメリカの主要施設が攻撃目標になってしまうという設定であれば、もう少しこの物語にも責任感というものが生まれたのではないでしょうか。
アクションシーンは少ないわストーリーは酷いわで、中盤以降は睡魔と戦いながらの鑑賞だったのだが、火薬量の多さだけは褒めても良い。アラスカでのドンパチシーンのド派手な爆発には「おいおい『クーロンズ・アイ』(1988)じゃないんだから💦」と心の中でツッコミを入れてしまいました。
空中燃料引火ドーナツや、燃え上がる「愛の不時着」など、記憶に残るシーンも多々あるし、一切の見所がないわけではない。…まあつまらないことには変わりないんだけどね。
1億3000万ドル以上の製作費を費やしているが、興行収入は8,000万ドル程度。赤字映画ランキングのトップ10に入るのではないかという勢いで大コケした失敗作中の失敗作。
エンドクレジット後に次回作への布石が打たれていたが、作れるわけねーだろそんなもん!!
オスカー俳優でありながらこんな映画に出演してしまったジェイミー・フォックス。…しかも途中で無駄死にしてしまうという扱いの悪さ。彼も草葉の陰でシクシク泣いていることだろう。
…にしても、このキャストなら普通ジェイミーが主役だよね。メインキャスト3人の中で彼だけスター性が飛び抜けてるのは誰の目にも明らか。
黒人スターでも白人俳優の引き立て役に徹しなくてはならない。20年前のハリウッドはそれが常識の世界だったんですねぇ…。