劇場公開日 2001年3月10日

スナッチ : インタビュー

2001年2月15日更新

「スナッチ」

ガイ・リッチー監督 インタビュー

並木しおり

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いつか子供向きの映画が作りたい

「スナッチ」でブラッド・ピットが演じるキャラクターは最高におかしい。ボクサーの彼がジャブのように繰り出す言葉は、本家のイギリス人にすら通じないのである。ひたすら訳の分からない英語を喋りつづけるという登場人物を生み出したのは、これが長編第2作目となるガイ・リッチー監督だ。

「アメリカ人であるブラッド・ピットに、むりやり正しいイギリス英語を話させるなんて、そもそも下らないと思ったんだ」

かつてハリソン・フォードと共演した「デビル」で、ブラピの話すアイルランド訛りに批判が集中したことがあったが、これはそれを逆手に取ったジョークなのだ。

このガイ・リッチーという男、やることなすことすべてがうまくいっている。初監督作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」は世界中で大ヒットとなり、ブラピのようなトップスターが出演を熱望するようになった。のみならず、世界でもっともパワフルな女性であるマドンナまで手に入れてしまったのである。プロポーズする際、自作に出演させることを約束したという噂だが、「そんな安っぽいプレゼントはしないよ(笑)」と本人は否定する。

当然、我々の関心は、マスコミをシャットアウトして行われた結婚式や、マドンナとの生活のことだが、話題がプライベートに及ぶと「うーん……」「さあ……」と口が重くなる。家庭を持ったことで、これからの作風になにか変化が出てくると思いますか、と遠回しに質問すると、こんな答えが返ってきた。

「いつか子供向きの映画をやりたいと思ってるんだ」

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「ロック、ストック~」「スナッチ」とバイオレンスに満ちた映画を作ってきた監督としては信じられないコメントだが、父親になったこととは直接関係はないと言う。「ああいう映画を観ると、現実の世界をひとまず忘れて、ファンタジーに浸れるじゃない? ぼく自身もそういうものを作ってみたいと思ってるんだ。みんなファンタジーに浸ることの楽しみを忘れてしまっているように思えるからね。昔からそういう映画をやりたいと思っていたんだけど、どこで道を誤ってしまったんだろうね(笑)」

いや、案外間違っていないのかもしれない。これまでの作品が暴力に溢れていながらコメディとして成立しているのは、リアリティがないからだ。テンポが良くて、効果音がたっぷりで、いわれてみればアニメ的である。

「ぼくは現実が退屈だと思ってるタイプなんだ。だからリアルな映画にはあまり興味がない。観客の人が映画のなかの世界を信じこめるだけのリアリティーは入れるけど、それだけに留めることにしてるんだよ」

そんなことを言いながらも、次作は宗教戦争をテーマにしたヘビーなドラマを作るという。本気で言っているのか、イギリス人特有のユーモアなのか不明だが、とにかく今後も目が離せない監督であることは確かだ。

イントロダクション

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