ルールズ・オブ・アトラクション : 映画評論・批評
2003年11月18日更新
2003年11月15日よりシネクイントほかにてロードショー
この世界は「物語」ではなく「技法」でできている
「形」と「意味」というものは分離独立して存在するわけではなく、形は意味なのだ。それを実現して見せるのが本作。登場人物である大学生たちの傲慢と不安、彼らの世界の狂騒と空虚は、ストーリーではなく、映像表現の技法によって語られる。
例えば、原作小説の冒頭で引用されるティム・オブライエンの小説「カチアートを追跡して」の一節、「全てのできごとはひとつひとつが独立していて、偶然で無作為で、それぞれに関連性のない、挿話的なもの。だから、できごとを起きた順に並べていっても、そんなことにはまるで意味はない」という世界認識は、セリフではなく、登場人物それぞれの行動をそれぞれ別個にフィルムの逆回転で、あるいはスプリット・スクリーンで描く、といった手法で表現される。登場人物のひとりのナンパ旅行の非現実感と浮薄さは、露出過多気味の手持ちDVカメラを俳優本人が回した、何を撮るのか自覚していない映像を細切れに編集するという手法で表現される。
そして、この「物語」よりも「技法」を強く意識させる、という映像の在りようは、この映画が描こうとする世界の在りようと、見事にシンクロしているのだ。
(平沢薫)