ザ・ロイヤル・テネンバウムズ : インタビュー
「天才マックスの世界」で注目を集めた新進気鋭の映画作家ウェス・アンダーソン監督の最新作「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」。eiga.com編集部が大推薦!の太鼓判を押すこの傑作の、重要人物ふたりのインタビューをお届けします!(聞き手:大久保賢一)
グウィネス・パルトロウ インタビュー
「パンダ目メイクは監督の指示よ(笑)」
グウィネス・パルトロウはこの5月にロンドンの小劇場で 「Proof」という劇に出演していた。舞台は「俳優の力が試される」という彼女は「観客席がとても近くて」というときに“in your lap”(観客を膝に乗せているような)という言い方をした。
98年の映画「恋におちたシェイクスピア」で彼女はアカデミー賞の主演女優賞を獲得した。そして出演依頼が殺到し、2000年から現在までに出た作品は11本にのぼる。そんな状態から抜け出したいという考えからの舞台挑戦だった。
「もうすぐ30歳(この9月が誕生日)だし、少し落ち着きたいと思っているの。その前にこの舞台と『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』に出られてよかった」
ウェス・アンダーソン監督の「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」は、実に愉快な作品だが、彼女自身もキャリアの節目になるユニークな役柄を好演している。放蕩者の父親(ジーン・ハックマン。ケッ作)が「もう一度やり直したい」と家族の元に現われる。「元」神童だった子供たち3人。小学生で戯曲を発表して天才少女と言われたマーゴがグウィネスの役だ。3人ともその後の人生で下降線、いまやほとんど陥没状態。
マーゴはパンダのようなアイ・メークで無表情を通す。
「メークも監督の指示よ(笑)。画面のすみずみまで細かく指定されているの」
着ている物も子供の頃からずっと変わらず、ラコステのワンピースにペニー・ローファーだ。
「髪留めも同じ。マーゴは少女の頃の自分に囚われたままなの。これまでの映画での私の役とは違って、感情の起伏を全く見せないポーカーフェイス。でも内側では強い感情がうずまいている。自分を出せば出すほど傷つくということを学んで、そうなってしまったのね。無表情の表情が、哀しいユーモアになっているところが、アンダーソン監督のユニークなところだと思うわ」
滑稽な、だからこそ哀しくもあるというユーモア感覚はアンダーソンの作品の特徴だ。
「孤独な人々の悲劇的なユーモアだと思う。私たちの誰にでも少しはあるような、ちょっと社会の枠からはみ出したところ、特異なところ。社会とうまくやっていきたいのだけど、できない。自分流というのがちょっと強くて。自分自身であることをあきらめない人たちといってもいいかも知れない」
だから、いっぷう変わって見えるテネンバウム家のメンバーを笑いつつ、我々は奇妙に惹かれてしまうのだ。
グウィネスは現実のニューヨークとは微妙に違って見えるこの映画のニューヨークがとても好きだと言う。
「お伽ばなしのニューヨーク、魔法にかけられたニューヨークなのよ」
日本には彼女のファンも多いが、彼女のファッションに憧れている女の子も多い。
「私はファッションそのものがすごく好きなの。ファンといってもいいくらい。アート・フォームとしても興味があるし。ファッション・ショーに行ったり、インターネットで検索したりしながら、次に何を買おうかなって考えて。ファッションで大事なのは、自分が好きなものに素直になること、自分で心地よくいられるものを知ることだと思う。それがスタイルだと思うわ」
スタイルを持った女性として、彼女は女優のキャサリン・ヘップバーンの強さとウィットに憧れると言う。
いま夢中になっている本は、映画「アイリス」にも描かれた作家アイリス・マードックの小説「海よ、海」だ。