劇場公開日 2003年6月7日

「【時代を経て意味を増すもの】」マトリックス リローデッド ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0【時代を経て意味を増すもの】

2021年12月19日
iPhoneアプリから投稿

この作品も多くのアクションが見どころだけれども、冒頭のトリニティー登場のシーンが実は一番カッコいいと思う。
というか、一番印象に残っている。

実は、公開当時より今の方が、「リローデッド」は、もっと意味を持っているのではないかと感じるところがある。

マトリックス ・シリーズは、「マトリックス 」が、斬新な構成やアイディア、仮想空間でのアクションが、他を寄せ付けない面白さの源泉になっていたと思う。

ただ、この「リローデッド」は、宗教的、哲学的なところに少し踏み込んで、シリーズ全体の物語に深みをもたらそうとしているように感じるのだ。

(以下ネタバレ)

実はプログラムされた預言者と予言者の守護者、そして、マトリックス を作ったとされるアーキテクト。

イスラエルの歴史学者でカミングアウトもしているユヴァル・ノア・ハラリの「神は人間が創り出したフィクション」という言葉を思い出す。

ザイオンで歌い踊り、なかなか良い答えを導き出せない人間たちを見ると、アルゴリズムに踊らされている僕たちの世界に重なるような気がする。

ネオをはじめとしたアノマリーも実は想定されたものだとしているのも、僕たちの世界の神が、後付けで様々な講釈をするのも同様ではないのか。

目に見えない支配に抵抗しようとするネオ、モーフィアス、トリニティーたち。

増殖するスミスは、無秩序に騒ぎ立てる陰謀説信奉者や、誹謗中傷傾向の高い連中、白人至上主義者、日本だったら、ネット右翼なんかにも重なる。

ネオに対し、アーキテクトが選択を迫る。

トリニティーを取るのか?
他の多くの人々を取るのか?

ハーバード大学のマイケル・サンデルのトロッコ問題のようでもある。

神は、多くを救えと促すように思う。
国家主義者や民族主義者は、国民のためにとか、民族のためにとか促す様に思う。
しかし、愛する人を救えもしないで、他の人を救うことが出来るのか。

僕たちにはシナリオ通りに簡単に鵜呑みに出来ないことはあるのだ。

もし愛する人を選択したことが奏功したら、神は、それも想定通りだと言うかもしれない。

でも、それは違うはずだ。

必要なのは、自らの選択だ。

それは、人間だからだ。

時代を経て、面白さを増した作品だと思う。

ワンコ