プライドと偏見 : 映画評論・批評
2005年12月27日更新
2006年1月14日より有楽座ほか全国東宝洋画系にてロードショー
あくまで皮肉で軽妙な“18世紀のトレンディドラマ”
出会いの印象はサイアクでも、なぜかお互いが気になる男女の“結婚への道”。ジェーン・オースティンの「高慢と偏見」は、あの「ブリジット・ジョーンズの日記」の作者もお手本にした英国女流文学の代表的傑作。ヒロインの恋の相手の名前(ダーシー)も同じ、キャラもカブっている。すなわち、寡黙で「プライド」が高そう。ヒロインはそんな彼に「偏見」を抱きながらも心のどこかで惹かれていく……。
今も昔もパートナー探しはラクじゃない、という点で、オースティンの描く世界はブロンテ姉妹の大ロマンに比べて“18世紀のトレンディドラマ”ともいえそうだが、忘れてならないのは、この時代には女性に財産相続権がなかったこと。働くのは労働者階級だし、中流以上の女性にとっては「結婚」がすべて。ことにこの物語のような5人姉妹の家では、親も娘たちも必死になるというものだ。
が、原作もこの映画も妙な悲愴感はなく、あくまで皮肉で軽妙。ブリジットの奮闘の方がよほどイタい。映画では、キーラ・ナイトレイが溌剌とした魅力を発散、女たちの騒ぎを背後からじっと見守る父親役、ドナルド・サザーランドの風格が全体を締めている。
(田畑裕美)