「映画『ロード・トゥ・パーディション』レビュー|経営者としての視点と講演会の学び」ロード・トゥ・パーディション 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)
映画『ロード・トゥ・パーディション』レビュー|経営者としての視点と講演会の学び
『ロード・トゥ・パーディション』は、裏社会を生きる殺し屋マイケル・サリヴァン(トム・ハンクス)が、家族を守るために自らの過去と向き合う、静かで力強い作品だ。表向きは犯罪映画でありながら、その本質には「信頼」「継承」「責任」といった経営者にも通じるテーマが貫かれている。
私自身、ある経営者向けの講演会で「トップの判断が未来を決める」と語られた言葉が強く印象に残っているが、本作はまさにその実例といえる。ボスであるルーニー(ポール・ニューマン)は、忠実で冷静なマイケルよりも、血のつながった問題児コナーを庇う。その判断が、組織の崩壊と悲劇の引き金となった。この「情と判断のズレ」が経営にもたらすリスクは計り知れない。
マイケルが、息子とともに逃避行の中で見せる「父として、男として、そして遺す者としての姿勢」は、後継者育成に悩む経営者にも通じる。理念は言葉で語るだけでは伝わらない。背中で見せる覚悟や行動の一つひとつが、未来に引き継がれていく。これは講演会で語られる成功談以上に、リアルな「継承の現場」だ。
本作はただの復讐劇ではない。経営者として、そして一人の人間として「何を信じ、誰に託すのか?」を考えさせられる。講演会では学びきれない、“生きざま”の教材としてこの映画は価値がある。人材登用、組織の舵取り、理念の継承——映画から得られる教訓は、現実の経営にも確実に活かせるだろう。
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