ロード・トゥ・パーディション : 映画評論・批評
2002年10月1日更新
2002年10月5日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
サム・メンデスのギャング映画はミニマルでエレガント
ギャング映画を作るとき、きまって「ゴッドファーザー」が目の前に立ちはだかる。これまで作られたギャング映画は数え切れないが、映画史に残るこの金字塔を越えた作品は現れなかった。
しかし、ひょっとしたら、サム・メンデス監督の「ロード・トゥ・パーディション」は、「ゴッドファーザー」に匹敵しているかもしれない。「ひょっとしたら」などと歯切れの悪い言葉を用いて申し訳ないが、どちらも同じジャンルを扱いながら、そのアプローチがまったく異なるため、比較が非常に困難なのだ。
たとえば、その演出法である。派手でオペラ的な演出を好んだコッポラ監督に対し、舞台出身のサム・メンデス監督のアプローチは、「Less is more」。余計な装飾を廃し、バイオレンス描写も最小限に抑えた。たとえば、息子がはじめて父親の「仕事現場」を目撃するシーンで、メンデス監督はのぞき見している子供の視点のみで描いた。通常のアクション映画のような、クロースアップや流血やスローモーションは一切なし。よく見えない視界、手ブレのカメラ、そして、鼓膜が破れそうなくらいのマシンガンの轟き――。メンデス監督は、ミニマルでエレガントなギャング映画の傑作を生みだした。
(小西未来)