ペイ・フォワード 可能の王国 : 映画評論・批評
2001年1月15日更新
2001年2月3日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
“善意のネズミ講”で幸せになろう!
受けた好意を相手に返すのではなく、誰かほかの3人に贈る。その3人もまた、それぞれ新たな3人に。「自分の手で世界を変えよう」という社会科教師の課題に反応して、この「ペイ・フォワード」なる方法を考えた少年トレバーに、ハーレイ君を起用したのが大正解。 彼の憂い顔は、世界を変えたい切実な事情を抱える少年の不安を伝えずにいないし、それでいて、今回は母親と社会科教師のキューピッド役に張り切る年相応の明るさも見せてくれるのだ・
ハーレイ君ファンならずとも、演技で感動を押しつけないスペイシー、ハントのオスカー俳優たちとの共演だけでも見応え十分。 しかも、これが意外と懐が深いのである。縁結びに燃えるトレバーに、「おいおい、結局、自分の周囲が幸せになればいいのか」と疑問を抱かせながら、本当のペイ・フォワードとは何かと考えさせずにいないのだから。それだけに、泣かせに走るラストがなんとも残念。そのディープ・インパクトは、ジョン・ボン・ジョビにその役はないだろうという不満のみならず、しみじみ浸るはずだった余韻まで吹き飛ばす。それでもやっぱり涙は誘われるし、ペイ・フォワードする気にさせるってことは、ミミ・レダー、いや、ハリウッド感動路線、恐るべし?
(杉谷伸子)