劇場公開日 2002年5月18日

「どうしても「ホーム・アローン」が思い浮かぶが、映画としてはスリリングでおもしろい。」パニック・ルーム あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0どうしても「ホーム・アローン」が思い浮かぶが、映画としてはスリリングでおもしろい。

2025年1月5日
PCから投稿

楽しい

単純

興奮

スリラーはデヴィット・フィンチャーお得意のジャンルだし、ジョディ・フォスターも出演しているし、ということで満足度の高い作品だった。
しかし、観ていてずっと「ホーム・アローン」(1990年)が頭から離れなかったのは致し方ないか。

夫と離婚したメグが娘と一緒に豪邸に住むことになる。
法律上あと数日は入居してはならないことになっていたが、不動産屋の手違いで住み始めてしまう。
もともとその家には富豪が住んでおり、遺族が侵入してくる。パニックルームに財宝が隠されているのを知っていたのだ。無人だと思って侵入したが、危険を察知したメグたちはパニックルームに逃げ込んでしまう。
侵入者たちとの攻防がはじまる。

2002年は「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」「ハリー・ポッターと秘密の部屋」「スパイダーマン」「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」といったブロックバスタームービーがヒットしていた時期。振り返ってみるとバラエティに富んでおり、映画の可能性がまだまだ広がっていた時代とも言える。

本作は、フィンチャーが1999年の「ファイト・クラブ」の次に撮った作品で、前作同様多様なカメラワークが駆使されている。
先端技術を活用するイメージのあるフィンチャーだが、本作ではヒッチコック風のサスペンスを目指している印象だ。
だからだろうか、クラシカルな豪邸が舞台で、時代性を感じさせるものはあまり出てこない。

製作費75億円で、興行収入300億円とそれなりにヒットしている。
しかしフィンチャーのフィルモグラフィーであまり名前が出てこない。
思うに、密室のサスペンスとしてはすぐれているが、登場人物がコマとして扱われている感じが否めないのも一因ではないだろうか。
ジョディ・フォスターの「羊たちの沈黙」では、彼女が演じたクラリスはバッファロー・ビル事件の解明というミッションがあったが、同時に彼女自身の暗い過去に立ち向かうという物語でもあった。
本作では侵入者と対決して勝つというミッションはあるのだが、それ以上のものがなかった。だから地味な印象で記憶に残らないのかもしれない。

あふろざむらい