パニック・ルーム : 映画評論・批評
2002年4月16日更新
2002年5月18日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
あと必要なのはユニバーサルのトレードマークだけ!
バーナード・ハーマン風交響楽に乗って、マンハッタンのビル群にCREDITが浮かび上がるオープニングから傑作を予感する。あれれ、まるでヒッチコック映画でないの!
セントラルパークのそばにある4階建ての高級タウンハウスが舞台の密室劇である。(「セブン」同様に)雨に濡れた夜、3人の強盗に押し入られた母(ジョディ・フォスター)と娘は隠し部屋“パニック・ルーム”に身を隠すが……。そこは、コンクリートの厚い壁に遮断された、家中を映し出す監視モニターがある完全なセキュリティに守られた部屋で、扉を閉めたが最後、誰も入れない! 映画はそうして壁越しの死闘へとなだれ込む。
“密室”となった建物の空間が、高低&横になめらかに“さまよう”カメラによって提示されるのが素晴らしい。ダイニングテーブルの高さをスルスルとトラベリングしてマグカップの取っ手の中さえもくぐり抜けるのだ。コンラッド・W・ホール(父は「明日に向って撃て!」の撮影監督)のカメラワークに陶酔する! 主演のジョディ・フォスターは「羊たちの沈黙」以来の熱演だろう。強盗役フォレスト・ウィテカーの“苦い勝利”にもシビれまくりだ。
もっと洒脱なユーモアがあれば、ユニバーサルのトレードマークがあれば、ヒッチコック映画と寸分違わない傑作だ。デビッド・フィンチャー監督の映像がつむぐパッションはまたもヤラレた!
(サトウムツオ)