「奴は、とんでもないものを盗んでいきました」オーシャンズ11 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
奴は、とんでもないものを盗んでいきました
シリーズ最新作を前に久々に鑑賞。
フランク・シナトラの1960年作『オーシャンと十一人の仲間』をリメイク。
極上のエンターテイメント、オールスター・ムービーの決定版!
何と言ってもやはり、その豪華贅沢なビッグスターの共演。
現在のハリウッドで誰からも慕われる“兄貴分”ジョージ・クルーニーに引き寄せられたかのように集った、ブラッド・ピット、マット・デイモン、ジュリア・ロバーツら一堂に会するのが嘘か夢のような面子。
魅力や個性を充分に発揮。
そのビッグネームの共演ばかりクローズアップされがちだが、個人的には、彼らと対するアンディ・ガルシアが貫禄すら感じさせる存在感。
11人の仲間の中では、カール・ライナーの好演光る。
それにしてもこの時、ケイシー・アフレックが後にオスカー俳優になろうとは誰が思っただろうか。
出所してすぐ“仕事”に戻る困ったちゃんのダニー。
仲間集め。計画。準備。下調べ。
退屈になりそうなここら辺もテンポ良く。
いざ、作戦決行! ワクワクドキドキ!
騙し騙されのカタルシス。
それらを、和気あいあいの撮影現場の雰囲気が伝わってくるとぼけたユーモアでオブラート。
それでいて、クールで、スタイリッシュで、スマート。
それもこれもスティーヴン・ソダーバーグのセンスと手腕の賜物。インテリで作家性の強い作品が多かったソダーバーグが、これほど痛快な大衆向け作品も難なくこなしてしまうとは、意外で何だか嬉しい発見でもあった。
“仕事”が終わって、仲間たちで噴水を見つめるラストが哀愁と余韻残って好き。祭りの後は…。
そこに、ダニーの姿は無い。一人だけ御用。
彼にはもう一つ、大金以上に盗みたいものがあったのだ。
ちょっとギザっぽいが、男のダンディズム、ロマンティズム。
ダニーはとんでもないものを盗んでいった。大金と、妻の愛と、我々の心を。
白人スターだけじゃなく、ご老体に黒人にアジア人らの組み合わせは今のハリウッドの人種の多様性を先見したかのよう。
…あ、でも、メンバーに女性が…。
ご安心を。
女たちは女たちでチームを組んで、男たちに負けじとゴージャス作戦開始!