ラブ・アクチュアリー : 映画評論・批評
2004年2月2日更新
2024年12月6日より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、 ヒューマントラストシネマ有楽町、グランドシネマサンシャイン池袋ほかにてロードショー
「物語」への真摯な姿勢と、鋭くも暖かい人間への視線
ヒュー・グラントが独身イケメン英国首相、ビリー・ボブ・ソーントンがフェロモン系の米大統領。ジョークのきいたキャスティングに象徴されるように、アンサンブル・ラブストーリーにしては豪華なキャストにひきつけられるこの作品。嘘っぽい展開のTVのラブドラマに辟易している向きには絶対のお勧め。その理由は、リチャード・カーティスの「物語」への真摯な姿勢と、鋭くも暖かい人間への視線にある。シンデレラ・ストーリーや三角関係といったラブストーリーの定番から、義理の父子などなど。さまざまなかたちの愛を描いたそれぞれの物語は、どれも「おとぎ話」のように観客をときめかせるのに、同時に、思わずはっとするリアルな感情をすくいあげてもみせる。ひとつひとつは目新しくない物語に、一歩間違うとクサくなりかねない寸前で、洒落た展開を見せながら、せつない愛にさえ胸の奥を暖かくさせるあたりは、さすが最近のイギリス映画人気を支えてきた脚本家だけのことはある。
19人9組と愛の数が多すぎて、それぞれの愛の物語がささやかになりすぎた気もしないじゃない。でも、このささやかさ加減もまた、ふだん気づかない「ラブ・アクチュアリー」な感じなんだよね、きっと。
(杉谷伸子)