ロード・オブ・ザ・リング : 特集
A Young Person's Guide to LOTR
第1回「旅の仲間」:トールキンのココだけは押さえる!
編集部
3.「指輪物語」を創った男、トールキン
このものすごい話を作ったトールキンについて、知っておきたいポイントは3つ。
まず、彼の生い立ち。実はイギリス生まれではない。イギリス人の両親のもと、1892年に南アフリカで生まれた。幼少時の彼は病弱で、3歳のときに、健康のためアフリカの過酷な気候を避けるべく母と弟とともに帰国、英国西部バーミンガムの近くで育つ。彼がのちに北方の文化に惹かれるのは、ひょっとしたら、この南での原体験が影響しているのかもしれない。また、幼い時に両親を失っている。帰国の翌年に父がアフリカから戻らないまま病没、12歳で母が病没。大学寮に入るまでは、母方の叔母と教区の神父に面倒を見てもらった。その後、オックスフォード大を卒業、第一次世界大戦に従軍。リーズ大教授を経てオックスフォード大教授になった。
次のポイントは、彼が若い頃から古い言語に強い興味をもっていたこと。オックスフォード大で学んだのは比較言語学。リーズ大では中期英語の語彙集を編纂、オックスフォード大ではアングロ・サクソン語の教授だった。「指輪物語」の「著者ことわりがき」でも「とりわけこれを私にかかせようとしたのは、主として言語学的な関心であり、エルフの言語に“歴史的”背景を与えるためにはじめたもの」だと書いている。
3つめは、こちらもファンタジー・シリーズの名作である「ナルニア国物語」の作者C・S・ルイスの親友だったこと。2人は文学や自著を語り合う教授仲間の会合で出会い、お互いの家に行き来する仲となり、その友情は長く続いた。親友の創作活動はお互いに刺激になったはず。
最後に、映画を観るうえで押さえておきたいトールキンのことばが「著者ことわりがき」にある。「この物語には隠された意味とかメッセージが含まれているのではないかという意見に対しては、作者の意図は何もないと申し上げよう」「私は寓意というものが、どんな形で示されようとどうしても好きになれない」「私は事実であれ、作為であれ、読者の考えや経験に応じてさまざまな適応性を持つ歴史のほうがずっと好きである」
※「著者ことわりがき」は文庫版第9巻「王の帰還 下」の巻末に収録