ロード・オブ・ウォーのレビュー・感想・評価
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「嘘」というキーワードと、孤独な才能。
〇作品全体
物語は主人公・ユーリの成り上がる姿を中心に回っていく。ユーリが銃の魅力に取りつかれ、銃を商売道具として裏の市場を飛び回る物語前半は、テンポ感が楽しい。このテンポ感は演出、といえばそれまでだが、ユーリが銃や武器について門外漢だったというのもあるだろう。政治的な駆け引きよりも誰に対しても武器を売るユーリの大胆なスタンスがあるから、武器商人の刺激的なビジネスも大味で描かれていく。そのジャンキーな大味がまた楽しかったりした。
そしてその調味料として足される、ユーリの「嘘」という要素も印象的。知識豊富な営業マンを装う嘘や、インターポールに向けた「嘘」。その「嘘」の立ち振る舞いが堂々でいて軽快。これがまた楽しい。
一方で物語後半は、前半にキーワードとして使われていた「嘘」が空転する。
破産覚悟で貸し切ったホテルで「経験上、いい関係は嘘の上の築かれる」とモノローグで語るユーリは、嘘によってエヴァを落としたが、「別れの原因もたいてい嘘なのだし…」と自身で語ったとおり、嘘が原因でエヴァや息子と別れることになった。弟の死もエヴァに嘘をついて武器に再び手を出したことが原因であるし、嘘によって手に入れたものを、嘘によって手放すことになった。
ただ一つ、ユーリが手放さなかったものは武器商人としてのユーリだ。手放さなかった…もしくは手放せなかった理由としては、自他共に認める武器商人としての才能には、なにひとつ嘘がないからだろう。
料理の才能がないもののヴィタリーは料理人を目指すが、才能がなかったゆえにユーリを頼って結果命を落とした。エヴァもユーリを頼って芸術家としての道を歩もうとするが、自身が才能がないことを自覚して自信を喪失していく。ユーリがいてほしいと思う人がユーリによって離れていき、ユーリが背中を押したいと思う人がユーリによって舞台から退場していく。この二律背反のような関係性が、才能あるユーリを孤独へとおいやっていく。
ラストシーンはユーリの孤独と合わせて、国家の嘘も顕在化されるのが面白い。国際組織が悪と認めた相手を裁くことはしないという、国家の嘘の顔。しかしその嘘がユーリを活かす。この関係性がユーリにとっての救いにも見えるし、より残酷なものにも見える。
それでも孤独な唯一無二の才能は自身の嘘だけでなく、世界の嘘をも背景に暗躍をし続ける。そんなラストカットだった。
〇カメラワークとか
・やはりオープニングテロップのときの銃弾主観演出がインパクト強い。作品公開から15年もたつとやっぱり嘘くさいCG感が拭いきれないけど、銃弾を検品する人の顔の近さや指の大きさが不気味な感じが逆に味になってる。
悲しい真実
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主人公のニコラスは弟と共に武器売買に手を染める。
そして弟は引退するが、一人で超一流の闇証人となる。
警察も彼の犯行を確信しているが、尻尾を捕まえられない。
やがて愛する女と出会い、自身の仕事を偽って結婚する。
刑事が妻にニコラスの正体を明かす。
妻は銃で両親を殺されたので、ニコラスを責める。
これを機会にニコラスは足を洗うが、
かつて濃い付き合いのあったリベリアの独裁者に唆され、復帰する。
信用できる仲間もいないので、弟を説得してコンビを組んだ。
いざリベリアへ武器を運ぶことに成功するが、その悲惨さに弟は驚く。
武器を持たない弱者達は理由もなく蹂躙され殺される。
それが当たり前になっている現状を見て弟は武器を売ることは、
罪もない人間達を間接的に殺すようなものだと主張する。
ニコラスは必死に抑えて仕方がないと言い聞かせるが、
弟はついに武器の半分を爆破し、リベリア兵士に殺された。
弟の死を事故死にしてアメリカに帰ったニコラスだが、
結局足がつき、刑事に捕らえられる。
しかしニコラスの予想通り、圧力によって解放となった。
世界最大の武器証人はアメリカを筆頭とした国連常任理事国である。
しかし立場上彼らはおおっぴらに武器を売れないことも多く、
その時にはニコラスのような存在は必要なのであった。
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考えさせられる作品。
おそらく慢性的な内戦という異常な状態の中では、
人間の命の価値なんて小さなものとなってしまうのだろう。
特に理由もなく、武器を持つ者のストレス解消のようなノリで、
簡単に人が殺されて行くのは悲惨だった。
確かにニコラスのような闇商人たちに責任はあるだろう。
しかし上記のように、最大の武器商人は先進国たちなのである。
しかも常任理事国がその力を利用して殺人兵器を売っている。
自国の利益のために・・・こんな世界ははっきり言って異常だ。
この作品は史実に基づいて作られたもので、
内容が内容だけにアメリカではなくカナダでの公開となったそうだ。
今さら綺麗ごとを言うつもりはないが、
それでも少しでも戦争や内戦はなくなって欲しい。
世界のリーダーたる先進国はエゴに走るのをやめるべきだ。
しかし弱者の味方となって全世界を飢餓から救おうとすれば、
たちまち人口爆発が起こって先進国にとっては都合が悪い。
だから助けられない。そういう矛盾と直面して生きている。
自分は、少なくとも贅沢に生きる事はしない。
それはただの自己満足だが、せめてもの誠意だと思う。
平凡という幸せを知らずに生きている人たちもいるのだ。
死の商人
ウクライナ難民から名だたる武器商人に成り上がったユーリ・オルロフ(ニコラス・ケイジ)の回想録のような話、本来ならユーリーを悪の権化、インターポールを善として攻防をサスペンスタッチで描くと思ったがユーリーの独白で物語が進んでゆく、頭ではユーリーの生き方など到底是認できるはずもないのだがニコラス・ケイジのイメージで誤魔化されてしまう演出手法には脱帽だ。
映画が武器商人の実態かどうかは知る由もないがアンドリュー・ニコル監督・脚本はかなりリサーチしたようだ、モデルは数人いたらしいが中でもソ連崩壊で大儲けをした元KGBの武器商人ビクトル・ボウトが有名で放映後の2008年タイで拘束され法廷闘争の後2012年に反米テロ組織に武器を売った罪状で禁固25年を言い渡されている、映画では釈放されていたが後日談のような話である、映画化が影響したかは不明だが目立ち過ぎては得意先からも切られるということか・・。
ニコラス・ケイジ
扮する武器商人の、のしあがりかたは凄い。
最後には家族を失うが、武器商人としての人生を続ける・・・
しかも、暗黙の了解で政府が必要悪と認めている。
こんな状態で、世界から戦争が無くなる訳がない!
問題作
初めて観たときはDVDパッケージの印象でドンパチ・アクション映画かと思ってました(笑)
それはさておき、オープニングの「銃弾の一生」的なシーンで、おっ!凄いなと…
一緒に見た方はイーサンホークに肩入れしてましたが、自分は主人公の機転とユーモアで修羅場を乗り切る姿が渋くていいと思って観てました。
映画としてはそれでいいのですが、現実では戦争・武器商人なんて悪でしかないなと…なかなか考えさせられる内容でした。
武器は売らずとも、誰しもニコラスケイジ
戦争被害者の9割は銃で死んでいるという台詞が突き刺さる作品。ニコラスケイジを執拗に追うイーサンホークの正義感は、視聴者の感想の代表だと思うが、本当の悪は国家で、この作品を見て感じる嫌悪感の比にもならぬ程の大きな戦争加担をし、武器売買を商売に国家繁栄させている。
禁輸対象の武器を、嘘に嘘を重ねて売りに売りまくって捕まるスレスレを何度も切り抜けて成り上がり、憧れの妻や贅沢な生活が手に入った背景には、売った武器が使われて失われた無数の命があることには無頓着。開花した商才にのめり込み、命を徹して止めようとしてくれた弟分も、妻からの信頼も失ったが、更生しない。フリーランスの自分が売る分など微々たるもんだからという事らしいが、反感を持つ人は多いだろう。
でも、一般民の私達も、先進国で暮らす限り、ロックフェラーにもロスチャイルドにも関与しない資金で成り立つ企業の製品だけで、生活を成り立たせる事などできないはず。自分もどこかで戦争に加担していると思うとおぞましい。知らないよりマシなだけで、見えないところで起こっている事に目を向けても、自分の事は棚に上げて、批評するしかできない情けなさを感じる。
この世の中で最大の必要悪
実話に基づいた映画であるがテーマは史上最大の必要悪=武器商人を描いた社会派のストーリーである。ニコラスケイジは多分、苦悩を隠し悪事に身を染める役が一番うまい。バッドル―テナントもその作品の一つだ。大きな悩みを抱えつつ世界最大の武器商人をやめられない男の物語。しかし世界最大の承認は実は米、仏、露、中、(?)最期の一つは忘れましたがであるということ。メッセージ性の強い映画です。エンターテイメントを求めるのはやめた方がいい。人間の本性とは何かと考えさせられる作品でした。
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