キングダム・オブ・ヘブン : 映画評論・批評
2005年5月13日更新
2005年5月14日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
エルサレム攻防戦の映像に圧倒される
十字軍の時代のエルサレムに、イスラムとの平和共存を求めた王と騎士たちがいた! この驚きの史実をもとに、リドリー・スコット監督は、運命に導かれてフランスからエルサレムへ旅立ち、苛酷な試練に立ち向かう騎士バリアンの物語を構築。観客を、多様な文化が調和した当時の壮麗なエルサレムへと誘い、バリアンの苦闘を体感させてくれる。
エルサレム奪還を狙うイスラムの知将サラディン。イスラム教徒を憎悪し、決戦を望む貴族たちの謀略。必死に戦いの回避を図る病の王と、急死した父の遺志を継いで王を支えるバリアン……。監督は、錯綜するそれぞれの思いと行動を、息詰まる緊張感とともに鮮やかに描写。スリリングな戦闘シーンも、光の陰影などを巧みに使い、戦いの悲しさや空しさを滲み出し、激しく感情を揺さぶられる。
そして、ついに始まるエルサレムの攻防戦。城壁に迫る20万のサラディン軍を、バリアンが奇策で翻弄し、手に汗握る。投石器や包囲塔も使われた激戦を空から、地上から縦横無尽にとらえた映像に圧倒され、民を守るためだけに戦うバリアンの姿が胸を打つ。宗教の対立が絶えない現代に投げかけられた思いが胸に染み、深い余韻に包まれる。
(山口直樹)