劇場公開日 2005年5月14日

キングダム・オブ・ヘブン : 特集

2005年5月9日更新

「グラディエーター」以降続く近年の叙事詩大作ブーム。しかし、アカデミー賞を制した「グラディエーター」と比較して、それ以降の作品たちは必ずしも大成功したとはいえない。では、今、新たに登場する「キングダム・オブ・ヘブン」はどうなるのだろうか?

「キングダム・オブ・ヘブン」は叙事詩映画ブームの真打ちとなるか?

文・構成:編集部

歴史大作ものがすっかり板についたオーリー
歴史大作ものがすっかり板についたオーリー

「トロイ」から「アレキサンダー」まで、叙事詩映画が続々公開される昨今、ついにその真打ちとなるべき作品「キングダム・オブ・ヘブン」が登場する。監督は、このブームが生まれる契機となった、久々の歴史スペクタクル大作「グラディエーター」のリドリー・スコット。そして主演は、ブームに拍車を掛けたファンタジー大作「ロード・オブ・ザ・リング」3部作で、一躍人気スターとなったオーランド・ブルーム。彼は「トロイ」でも主要登場人物を演じている、いわばこのブームの顔だ。そんな監督と俳優がコンビを組みんで製作されたのが、「キングダム・オブ・ヘブン」だと言えるだろう。

それを検証するべく、「グラディエーター」から「キングダム・オブ・ヘブン」まで、叙事詩映画の流れを一覧表にしてみた。すると、この映画はこれまでのブームが生み出していた傾向を押し進める作品であり、同時にブームの原点に戻った作品でもあると言えそうだ。

>>叙事詩映画比較一覧表

若手ながら主人公という大役を担う
若手ながら主人公という大役を担う

まず、ブームの傾向として見えてくるのは、主演男優の年齢が徐々に若くなっていること。今回のオーランド・ブルームは、これらの映画の中では最年少。この傾向をもっとも極めたキャスティングといえる。

そしてもうひとつ気づくのは、豪華キャスト共演のオールスター映画化の傾向。中には「キング・アーサー」のように、キーラ・ナイトレイ以外は無名のヨーロッパ俳優を使うという大胆なキャスティング(女優以外を無名俳優で固めるのは「ロード・オブ・ザ・リング」方式ともいえる)の作品もあるが、それ以外の作品はみな、誰もが知っている華やかな若手人気俳優と、ちょっとうるさい映画ファンにもウケそうなシブめの演技派の双方を取り混ぜたオールスター・キャスト。「キングダム・オブ・ヘブン」もこの例外ではなく、主人公とヒロイン役は若手に、その周囲は実力派のベテランで固めてあるのは、この傾向の延長線上にあるといえるだろう。

描かれるのはあくまで普通の人間のドラマ
描かれるのはあくまで普通の人間のドラマ

その一方で、原点の「グラディエーター」に立ち戻っていると思われるのは、ドラマの作り方だ。その後の叙事詩映画が歴史的人物、伝説的人物を描いたのに対して、「キングダム・オブ・ヘブン」の主人公は「グラディエーター」と同じ、ひとりの普通の人間。叙事詩映画はどれも一見、似て見えるが、リドリー・スコット監督が描こうとするのは、ある伝説的な英雄ではなく、ある歴史のうねりの中の一個人、いわば歴史と個人という物語なのではないだろうか。

これらを踏まえたうえで、しかし、忘れちゃいけない叙事詩映画のポイントは、現代劇では実現できない壮大な映像絵巻だろう。「グラディエーター」以後の叙事詩映画にもっとも欠けていたのは、この点なのではないだろうか。さまざまな異文化が出会う砂漠の都エルサレムを、映像派と呼ばれたリドリー・スコット監督がどう映像化するのか。カメラマンは「グラディエーター」以来、スコット監督と組んできたジョン・マシソン。このコンビによる映像は、剣と鎧の合戦シーンに食傷気味の私たち観客たちを圧倒するのか。本作がブームの真打ちとなるかどうかは、この一点にかかっているのかもしれない。

大迫力の合戦シーンももはや当たり前…
大迫力の合戦シーンももはや当たり前…

また「キングダム・オブ・ヘブン」は、叙事詩映画ブームに続く新たなブーム=歴史映画ブームの始まりとなる作品なのかもしれない。「キングダム・オブ・ヘブン」のウィリアム・モナハンの脚本でマルコ・ポーロの生涯を描く歴史大作「Marco Polo」が企画進行中で、マット・デイモンが主演候補との噂もある。また、同じモナハン脚本でリドリー・スコットが監督、19世紀の合衆国の北アフリカ外交を描く「トリポリ」の企画も動いている。そういえば、「キングダム・オブ・ヘブン」の時代設定は古代ではなく中世。叙事詩映画ブームの次は、歴史映画ブームがやってくる?

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