キング・アーサー(2004) : インタビュー
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アントワン・フークワ監督インタビュー
戦闘場面のアクション演出でも意識したのはリアリズムだ。
「紀元5世紀の戦闘は、実際はかなり暴力的だったと思うんだ。血飛沫がいっぱいで身体の断片が飛び散るような。だからそういう過激な戦闘場面を撮影したんだけど、スタジオがPG-13にしてほしいと言ってきたから、カットしたんだ。それはDVDには収録するから、DVDはR指定だよ(笑)。
戦闘は大群衆なのに全員が接近して戦うから、主要キャストだけじゃなくて、全員の動きをきっちり決めて撮ったんだ。そうじゃないとケガをしかねないからね。カメラマンの居場所もないくらいの接近戦だから、このシーンの撮影で活躍したのは小型カメラだ。35ミリと16ミリのとても小型のカメラを開発して、剣の先や楯や馬の鞍に設置して撮影したんだよ。地面に埋めたカメラもあった。多いときは18台のカメラを同時に回したんだ。だからカット割りがかなり細かくなっちゃってるんだけどね。ほんとうはもっとドラクロワの絵画みたいな、オペラみたいな映像も撮りたかったんだ。引きで、戦場の360度を静かにぐるーっと長回しで撮るというような画も撮りたかったんだけどね。
それと動き。人物が馬上で会話しているような場面でも馬はいつも動いているようにした。じっとしてたら突ついて動かしたりしてね。馬が静止していると画が止まるから。
いちばん誇れるのは氷上の戦闘シーンだな。凍った川を渡るというのは脚本にあったけど、どんなふうにするかという演出を考えたのは僕だ。撮影はたいへんだったけど、印象的なシーンになったと思う」
映像の色調はブルーが基調の寒色系だが、これも意図的なもの。
「基本はブルーで、グリーンがところどころに加えられている。この色調にしたのは舞台が北国だからだけじゃなくて、ダークエイジと呼ばれる暗黒時代だからなんだ。『World Lit by Fire』という本で読んだ、生命というものは光によって育まれる、という考え方が頭にずっと残っててね。この物語の時代は戦闘が続く、生命にとって健全じゃない時代だから、自然な陽光ではない、青や緑がかった色調の映像にしたんだよ。
色調についてはカメラマンと綿密に打ち合わせたよ。カメラのスラボミール・イジャックは、キェシロフスキー監督の『トリコロール/青の愛』の映像がすごく好きで、『トレーニング・デイ』も撮影してもらう予定だったんだけど、彼が『ブラックホーク・ダウン』にオファーされたから譲って、今回、やっといっしょに仕事ができたんだ。すごく厳しい人だけど仕事はすばらしいよ。僕の次回作はミヒャエル・バルハウスに撮影してもらうんだけど、彼も同じポーランド人で気質が似てる。ポーランド人気質なのかもね(笑)」
その新作は、ベトナム戦争の戦場にドラッグを供給した実在のドラッグ・ディーラー、フランク・ルーカスを描く「Tru Bru」。「トレーニング・デイ」のデンゼル・ワシントン主演、「21グラム」のベニチオ・デル・トロが共演、脚本は「シンドラーのリスト」のスティーブン・ザイリアンという要注目作だ。
「ベトナム戦争時代にアメリカ政府が組織的にドラッグ・ディールに関わっていたというのは実話なんだけど、それを描くかなり社会問題を提起する作品になる。アメリカから追い出されちゃうかも(笑)」