ジャーヘッド : インタビュー
「アメリカン・ビューティー」(99)でアカデミー賞を制覇したサム・メンデス監督の新作は湾岸戦争を描いた「ジャーヘッド」。「今までに観たことのない戦争映画」と言われるに本作ついて、監督に語ってもらった。(聞き手:わたなべりんたろう)
サム・メンデス監督インタビュー
「今の若者は感情的に麻痺し過ぎているんだと思います」
――この映画は戦争映画でありながら、現代の若者を描いた青春映画の側面が強いと思います。
「まさにそうです。あまりそう言ってくれる人はいないですが、現代の無気力な若者が、戦争の緊張感あふれる現場を体験する青春映画です。ただし、『自分が何をしている』または『何をしていいか分からない』状況が描かれた青春映画なんです」
――音楽、特にノーティバイ・ネイチャーの「OPP」やパブリック・エネミーの「ファイト・ザ・パワー」のようなラップの使い方が興味深かったです。
「映画の中で『ベトナム戦争じゃないんだから、ドア-ズをかけるのをやめろ!』と言うシーンがあります。もちろん、ドアーズが効果的に使われている『地獄の黙示録』(79)を意識した台詞ですが、それだけではなく、90年代の戦争を表現するためでもありました。この映画で描かれている、湾岸戦争に行った若者が普通に聴いているだろうと思われる音楽が、ラップだったのです。その2曲の内容は前者がパーティ・ソングで、後者がブラック・パワーを鼓舞する曲と対照的ですが、皮肉の意味も込めて両方の曲をパーティ・ソングとして使いました。歩兵から見たら、退屈な戦争で彼ら自身の気持ちを奮い立たせる意味もありました」
――エンドクレジットに流れるカニエ・ウェストの「ジーザス・ウォークス」は?
「素晴らしい曲で、歌詞で分かると思いますが、この映画にとても合うんです。歌詞は『テロや人種差別がなくならない世の中で、何よりも毎日、自分自身と戦っている。そして社会には色々な誘惑や恐怖があるけれど一番恐るべきものは自分自身であり、どんな罪をもった人間とも神は共に歩いているんだ』という内容で、軍楽隊風のスネアドラムも出てきますからね」
――「地獄の黙示録」(79)を映画の中に使ったのは?
「もちろん素晴らしい戦争映画だからです。本作と比較すると、無垢な若者たちが戦争の現場で変わっていく点は共通していますが、描いている戦争と時代が決定的に違うことが重要です」
――全編に流れるメランコリーに関しては?
「良い戦争映画は全てメランコリーな側面を持っていると思います。本作の主人公は故郷から遠く離れた戦地で戦いながら、いつか故郷にもどることが分かっているからメランコリーなんだと思います。過去の戦争である湾岸戦争を回想していることも、メランコリーなことを倍加させているのだと思います」
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